僕の昔やらかした失敗を白状します。
スタジオ撮影の仕事で納品した映像、クライアントから「色がおかしい」ってダメ出し食らったんですよ。自分のモニターでは完璧だったのに。
原因はRec.709とRec.2020の混同でした。配信用と映画用の色空間、全然違うんですよね。当時は「色なんて見た目で合わせればいい」って思ってたけど、それが大間違い。
そこから色空間の規格を徹底的に勉強しました。どの案件でどの色空間を使うべきか、フローチャートまで作って。今では撮影前に必ずクライアントと色空間の確認をします。
おかげで「この人に頼めば安心」って言われるようになって。技術って、こうやって信頼に変わっていくんですね。あの失敗があったから、今の自分がいるんですね。

:なぜ現場で「色が合わない」の
「カメラのモニターでは完璧だったのに、レコーダーで見たら色が違う」 「編集で書き出したら、なぜか彩度が上がっている」 「ATEM経由で配信したら、肌色が変わってしまった」
映像制作の現場で、こうした経験をしたことはないだろうか。
この問題の根本原因は、機材ごとに異なる「カラースペース」の扱いにある。カラースペースとは、映像の色情報を数値化するための「色の表現方法」だ。Rec.709、Rec.2020、sRGB、DCI-P3…これらは単なる規格の名前ではない。それぞれが異なる「色の座標系」を持ち、同じ数値でもまったく違う色として解釈される。
問題は、多くの機材が「デフォルト設定のまま使われている」ことだ。カメラはRec.709で撮影し、レコーダーはRec.2020で記録し、モニターはsRGBで表示する。当然、色は一致しない。
本記事では、ATEM認定トレーナーとして数百件の現場をサポートしてきた経験から、実際に起こるトラブル事例と、その具体的な解決策を解説する。
なぜ「カラースペース」を理解しないと、現場で致命的なミスを犯すのか
多くの映像クリエイターが、カラースペースを「後から調整すればいい問題」だと考えている。これは大きな間違いだ。
カラースペースの不一致は、撮影時点で既に色情報の欠損や変質を引き起こしている。編集で色を合わせようとしても、失われた情報は戻らない。特に以下のような状況では、取り返しのつかない結果を招く。
クライアントワークでの「色の不一致」は信頼を失う
企業VPやブライダル映像で、納品後にクライアントから「色が違う」とクレームが来た経験はないだろうか。撮影現場のモニターで確認してもらった色と、納品データの色が違う。原因はカラースペースの認識違いだが、クライアントにそれを説明しても理解は得られない。
ライブ配信での「色バケ」は修正できない
ATEMを使ったライブスイッチングで最も怖いのは、配信中にリアルタイムで色が変わってしまうことだ。カメラAとカメラBで肌色が違う。外部入力の映像だけ彩度が異常に高い。これらは全てカラースペースの不一致が原因だが、ライブ中に修正する時間はない。
HDRとSDRの混在現場での「色の破綻」
最近増えているのが、HDR対応カメラとSDRモニターが混在する現場だ。HDR映像をSDRモニターで確認すると色が薄く見える。逆に、SDR前提で調整した映像をHDRモニターで見ると、過度に鮮やかになる。カラースペースとダイナミックレンジの関係を理解していないと、正確な色管理は不可能だ。
現場で実際に起こる「カラースペーストラブル」実例集
ここからは、実際の現場で頻発するトラブルを紹介する。おそらく、あなたも一度は経験しているはずだ。

実例1:「Sony α7S IIIとCanon R5を混在させたら、肌色が揃わない」
マルチカメラ撮影で異なるメーカーのカメラを使用した際、同じ被写体を撮影しているのに、肌色がまったく違う色になる。
原因:
各メーカーのカラーサイエンス(色の解釈方法)が異なる上に、カメラごとに設定されているカラースペースのデフォルト値が違う。Sonyは「S-Gamut3.Cine」、Canonは「Cinema Gamut」といった具合に、同じRec.709出力でも内部処理が異なるため、色が一致しない。
実例2:「BlackmagicのレコーダーとAtomosで記録したら、色が違う」
同じカメラからHDMI出力を分岐し、BlackmagicとAtomosの両方で収録。後から確認すると片方は正常、もう片方は彩度が異常に高い。
原因:
レコーダー側のカラースペース自動認識が誤動作している。カメラからのHDMI出力にカラースペース情報が正しく埋め込まれていない、もしくはレコーダー側が誤って解釈し、Rec.709で送られてきた映像をRec.2020として記録してしまう。
実例3:「ATEMでスイッチングしたら、外部入力だけ色が浮く」
PC画面やプレゼン資料をATEMに入力すると、その映像だけ異常に鮮やかに見える。カメラ映像は正常なのに、グラフィックス入力だけ色が合わない。
原因:
PCのHDMI出力はsRGBカラースペースで送信されるが、ATEMはデフォルトでRec.709として処理する。sRGBとRec.709は近似しているが完全に同一ではなく、特に彩度の高い色で差が出る。さらに、PCのグラフィックドライバーが「フルレンジ(0-255)」で出力し、ATEMが「ビデオレンジ(16-235)」で受けると、コントラストも変化する。
実例4:「DaVinci Resolveで編集したら、YouTubeにアップした時に色が変わった」
DaVinci Resolveで完璧に仕上げたグレーディング。書き出したファイルをYouTubeにアップロードすると、なぜか色が薄くなる。
原因:
YouTubeは内部的にRec.709のビデオレンジで処理する。書き出し時にカラースペースのタグ付けが不適切だと、YouTubeのエンコーダーが誤って解釈し、色が変換されてしまう。特にH.264/H.265のメタデータに「色特性」が正しく埋め込まれていないと、この問題が発生する。
この記事で得られる「具体的な解決策」とは
ここまで読んで、「自分も同じトラブルを経験した」と感じた方も多いはずだ。
しかし、問題は**「カラースペースが原因だと分かっても、どう対処すればいいか分からない」**ことだろう。
ネット上には「Rec.709とは」「sRGBとは」といった基礎解説は溢れている。だが、実際の機材設定や、トラブルシューティングの具体的な手順を示した情報は極めて少ない。
本記事の有料部分では、以下の内容を網羅的に解説する。
有料部分で学べる内容
1. カラースペースの本質的な理解
- Rec.709、Rec.2020、DCI-P3、sRGBの違いを「色域」「ガンマカーブ」「輝度レベル」の3軸で正確に理解する
- なぜ同じ映像でも機材によって色が変わるのか、数値レベルで解説
- フルレンジとビデオレンジの違い、そしてこれが引き起こすトラブルの正体
2. 機材別の具体的な設定方法
- ATEM Mini/Constellation各シリーズのカラースペース設定とトラブル対処法
- Sony、Canon、Panasonic、Blackmagic各社カメラの正しいカラースペース設定
- 外部レコーダー(Atomos、Blackmagic)の設定と注意点
- モニター(業務用/民生用)のカラーキャリブレーション実践
3. トラブル発生時の診断フローチャート
- 「色がおかしい」と感じた時、どこから確認すべきか
- 機材間の色が合わない時の切り分け方法
- 現場で即座に対処できる応急措置
4. ワークフロー別のベストプラクティス
- ライブ配信(ATEM + 複数カメラ)での統一手順
- マルチカメラ収録 → ポスプロ編集の正しいワークフロー
- HDRとSDR混在環境での色管理
- クライアント納品時の色空間指定とメタデータ管理
5. よくある間違いと、その修正方法
- 「これをやると確実に失敗する」設定パターン
- すでに撮影してしまった素材の救済方法
- カラースペース変換時のデータ劣化を最小限にする技術
無料部分はここまでとする。

ここから先は、実際の設定画面のスクリーンショット、具体的な数値設定、そして現場で即使えるチェックリストを含む、実践的な内容になる。

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