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動画配信での公共無線回線ボンディング活用術:複数キャリアで安定配信を実現する

2025 12/25
通信
2025-12-232025-12-25

僕の昔やらかした失敗を白状します。

コロナ禍で初めてのリモート収録、5拠点同時サイマル配信だったんです。準備は完璧なはずだった。でも本番で2拠点の映像が完全にフリーズ。

パニックになりながら気づいたのは、上り帯域の計算ミス。各拠点のネット環境を確認してなかったんです。プロとして、あり得ない準備不足でした。

そこからボンディング技術やLMS技術を徹底的に研究しました。複数回線を束ねて安定性を上げる方法、モバイル回線のバックアップ構成…。技術の進化を追いかけ続けることの大切さを知りました。

今では「リモート配信ならこの人」って呼ばれるようになって。あの失敗が、新しい専門性を生み出してくれた。技術を学ぶって、未来の自分への投資なんですよね。

でも、あなたは同じ失敗はしないでくださいね。

目次

はじめに:なぜ今、ボンディング技術なのか

配信現場で最も恐れられているトラブル、それは「回線の不安定さ」だ。

どれだけ高価な機材を揃えても、どれだけ入念にリハーサルを重ねても、ネットワークが途切れた瞬間、すべてが水の泡となる。特に屋外イベントや仮設会場での配信では、有線LANが引けない状況も多い。

そこで注目されているのが「ボンディング技術」である。

docomo、au、ソフトバンク、さらにはWiMAXなど、複数のキャリア回線を束ねて使う。これにより、1社の回線が不調でも配信は途切れない。帯域も合算できるため、4K配信も現実的になる。

本記事では、映像システムの現場で実際に使われているボンディング技術について、基礎から実践まで解説する。

画像

ボンディング技術とは何か:基本原理を理解する

ボンディング(Bonding)とは、複数の通信回線を論理的に「束ねる」技術のことだ。

イメージとしては、細いストローを何本も束ねて太いパイプにするようなものである。1本のストローでは飲み物を吸い上げるのに時間がかかるが、10本束ねれば10倍の速度で吸い上げられる場合もある。
または、1本が途切れても他の回線で補うこともできる。

配信におけるボンディングの仕組み

動画配信でボンディングを行う場合、以下のような流れになる:

【現場側(送信)】

  1. エンコーダー側:映像データを複数の小さなパケットに分割
  2. 各回線への振り分け:docomo、au、ソフトバンクなど、利用可能な回線に分散送信

【サーバー側(受信・再結合)】 3. サーバーでの受信:各キャリアから届いた全パケットを受信 4. パケットの再結合:バラバラに届いたパケットを正しい順序で組み立て直す 5. 映像データの復元:元の映像ストリームに復元

【配信側(送信)】 6. 配信プラットフォームへ:YouTubeやFacebookなどへ単一ストリームとして送出

また、素材伝送を受け取る場合、
【サーバー側(受信・再結合)】スタジオでIP伝送した素材を基にプロダクションするケースではSDI出力などでスイッチャーと接続する。

重要なのは、この一連の処理が「ほぼリアルタイム」で行われることだ。

画像

サーバーの役割:なぜ必要なのか

ここで多くの人が疑問に思うのが「なぜサーバーが必要なのか?」という点だろう。

答えは、各回線から届くパケットの到着タイミングがバラバラだからだ。

例:4つの回線でパケットを送る場合

現場のエンコーダーが10個のパケット(A〜J)を送信

docomo回線   → パケットA, E, I を送信
au回線       → パケットB, F, J を送信  
ソフトバンク → パケットC, G を送信
WiMAX回線    → パケットD, H を送信

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これらのパケットは、各回線の速度や遅延が異なるため、サーバーには以下のような順序で到着する:

到着順序:A → C → B → E → D → F → G → I → H → J

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サーバーは到着したパケットを一時的にバッファ(保管)し、正しい順序(A→B→C→D→E→F→G→H→I→J)に並べ替えてから、次の処理へ送る。

このパケット管理がなければ、映像は壊れてしまう。

画像

サーバーからの出力先:配信だけではない

ボンディングサーバーで再結合された映像は、必ずしもそのままYouTubeやFacebookへ配信されるわけではない。

用途によって、以下のような出力先がある:

1. 直接配信する場合

現場(エンコーダー + ボンディング機器)
  ↓
ボンディングサーバー(パケット再結合)
  ↓
配信プラットフォーム(YouTube、Facebook等)

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これが最もシンプルな構成だ。中小規模の配信に適している。

2. スタジオへIP伝送する場合

現場(カメラ + エンコーダー + ボンディング機器)
  ↓
ボンディングサーバー(パケット再結合)
  ↓
本社スタジオ(SRT/NDI/RTMP等で受信)
  ↓
スタジオでスイッチング・合成・テロップ追加
  ↓
配信プラットフォーム(YouTube、Facebook等)

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この構成は、以下のような現場で使われる:

テレビ局のニュース中継

  • 各地の取材現場からボンディング経由でスタジオへ映像伝送
  • スタジオでニュース番組に組み込んで放送

企業の全国イベント中継

  • 全国各地の支店からボンディング経由で本社スタジオへ映像伝送
  • 本社でマルチカメラスイッチングして配信

スポーツ中継

  • 競技場からボンディング経由で中継車や制作スタジオへ映像伝送
  • 複数カメラの映像を統合して放送品質で配信

eスポーツ大会

  • 複数会場からボンディング経由でメインスタジオへ映像伝送
  • スタジオで実況・解説を重ねて配信

3. ハイブリッド構成(スタジオ経由 + バックアップ直接配信)

現場(エンコーダー + ボンディング機器)
  ↓
ボンディングサーバー(パケット再結合)
  ├→ 本社スタジオ(メイン)
  │   ↓
  │  スイッチング・編集
  │   ↓
  │  配信プラットフォーム
  │
  └→ 配信プラットフォーム(バックアップ直接配信)

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スタジオ側でトラブルが発生しても、バックアップとして現場からの映像が直接配信され続ける。ミッションクリティカルな配信に適している。

IP伝送素材としてのメリット

ボンディングをスタジオへのIP伝送に使う最大のメリットは、有線が引けない場所からでも、放送品質の映像をスタジオへ送れることだ。

従来の中継では:

  • 衛星中継車:数百万円/日のコスト
  • 専用回線の敷設:工事に数週間、費用も高額
  • マイクロ波中継:免許が必要、機材が大型

これらに対して、ボンディングなら:

  • 機材を持ち込むだけで即座に運用開始
  • コストは通信費のみ(月数万円)
  • 4K映像も伝送可能

この柔軟性が、ボンディング技術が急速に普及している理由だ。

サーバーの設置方法:3つの選択肢

ボンディングサーバーの設置方法には、大きく3つの選択肢がある。

1. メーカー提供のクラウドサーバーを利用

  • Peplink、LiveU、Dejero、Teradekなどが提供
  • 月額費用:5,000円〜50,000円
  • メリット:構築不要、24時間稼働保証
  • デメリット:月額費用が継続的に発生

2. 自社でクラウドサーバーを構築

  • AWS、Azure、Google Cloudなどで構築
  • 月額費用:4,000円〜(規模による)
  • メリット:コストを抑えられる、カスタマイズ可能
  • デメリット:技術的知識が必要

3. 専用ハードウェアサーバーを設置

  • Dejero WayPointなどの物理サーバー
  • 初期費用:100万円〜300万円
  • メリット:最高レベルの安定性、自社ネットワーク内で完結
  • デメリット:初期投資が高額

スタジオへのIP伝送用途では、特に「3. 専用ハードウェアサーバー」が選ばれることが多い。

理由:

  • スタジオに常設できる
  • 自社の放送システムと直接統合できる(SDI出力など)
  • 遅延を最小限に抑えられる
  • セキュリティ上、外部クラウドを経由させたくない

どの方法を選ぶかは、予算、技術力、配信頻度によって決まる。

小〜中規模の事業者なら、まずはメーカー提供のクラウドサーバーから始めるのが安全だ。

技術者がいる組織なら、自社でクラウドサーバーを構築することでコストを大幅に削減できる。

放送局レベルの品質を求める場合、またはスタジオへの常設IP伝送システムを構築する場合は、専用ハードウェアサーバーの導入を検討すべきだ。

※サーバー構築の詳細については、有料部分の第5章で解説する。

2つの動作モード

ボンディング機器には大きく分けて2つの動作モードがある。

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1. アグリゲーションモード(帯域合算型) 複数回線の帯域を束ねて太い回線にする。例えば20Mbps + 15Mbps + 18Mbpsで合計53Mbps相当の帯域を確保できる。

このモードでは、サーバーがパケットの再結合を行うため、必ずサーバーを経由する必要がある。

2. フェイルオーバーモード(自動切替型) 最も強い回線を自動選択し、問題が発生したら瞬時に別の回線へ切り替える。視聴者は切り替わりにほとんど気づかない。

このモードでは、サーバーを経由しない製品もある(機種による)。そのため遅延を最小限に抑えられる。

現場では、この2つを状況に応じて使い分けることになる。

なぜ複数キャリアなのか

「同じキャリアのSIMを複数使えばいいのでは?」と思うかもしれない。

しかし同一キャリアの場合、基地局の混雑や障害で全回線が同時に影響を受ける。

複数キャリアを使う真の目的は、冗長性の確保にある。docomoがダメでもauが、auがダメでもソフトバンクが生きている。この安心感こそが、ボンディングの本質だ。

各キャリアの特性:それぞれに得意分野がある

各キャリアには明確な特性の違いがある。簡単に整理しておこう。

docomo 全国カバー率が高く、地方や山間部に強い。安定性重視ならメイン回線候補だ。

au 都市部での速度が安定している。バランス型でdocomoとの相性が良い。

ソフトバンク 都心部の実効速度に優れる。大都市圏では必須の選択肢だが、地方では補助的な位置づけとなる。

WiMAX データ容量無制限プランが豊富で比較的安価。ただし建物内や地下に弱く、メイン回線には向かない。

現場の立地条件によって、どのキャリアをメインにするか、どう組み合わせるかが変わってくる。

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ボンディングのメリットとデメリット

メリット

圧倒的な安定性 回線が途切れない。これがすべてだ。ライブ配信において「途切れない」ことは、画質以上の価値がある。

帯域の拡張 複数回線を束ねることで、4K配信に必要な30〜50Mbpsの帯域も確保できる。

場所を選ばない 事前の会場調査が十分でなくても、4キャリア用意しておけば必ずどれかが使える。

デメリット

コストの増大 機器の初期投資に加え、複数キャリアの月額通信費が継続的に発生する。小規模配信では費用対効果が見合わないケースもある。

機材管理の複雑化 SIMカード、モデム、ルーター、ボンディング機器。持ち運ぶ機材が増え、セッティング時間も延びる。

専門知識の必要性 APN設定、機器の詳細設定、トラブル時の切り分け診断など、ネットワークの知識が求められる。

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こんな現場には必須の技術だ

ボンディング技術は万能ではない。しかし以下のような現場では、もはや必須と言える。

  • 全国各地を移動する配信事業者
  • 屋外イベントの配信を請け負うプロダクション
  • 高画質(4K)配信を求められる案件
  • 配信の失敗が許されないミッションクリティカルな現場
  • すでに機器を導入したが使いこなせていない技術者

逆に、固定会場で有線LANが安定している場合や、月1回程度の配信頻度なら、ボンディングは過剰投資になる。

有料部分で解説する内容

ここまでは「ボンディングとは何か」という基礎知識だった。

ここから先の有料部分では、実際に現場で使うための具体的なノウハウを解説する。

  • どのメーカーのどの機種を選ぶべきか
  • 各キャリアとどう契約すれば有利か
  • 実機の設定手順(APN設定からボンディング機器の詳細設定まで)
  • 本番中のトラブル対処法
  • 配信プラットフォーム別の最適設定
  • サーバー構築の詳細(AWS、専用ハードウェア)

メーカーのマニュアルには書かれていない「現場の勘所」を、すべて公開する。

機材を買っただけでは使いこなせない。適切な知識があって初めて、ボンディングは武器になる。

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