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ラウドネス完全攻略ガイド

2025 12/25
音響
2025-12-25
画像
目次

STEP 1:イントロダクション

なぜ音量がバラバラなの?

YouTubeで動画を見ているとき、次の動画に切り替わった瞬間、突然音が大きくなって慌ててボリュームを下げた経験はないだろうか。

あるいはSpotifyでプレイリストを流していて、曲が変わるたびにリモコンに手を伸ばす。この「イライラ」、実は多くの人が感じている共通の悩みだ。

なぜこんなことが起きるのか?

それは、制作者がそれぞれ異なる基準で音量を調整しているからだ。テレビCMが本編より大きく聞こえるのも、同じ理由による。

この問題を根本から解決しているのが、ラウドネスという技術である。

放送業界では2010年代から導入が進み、今ではYouTube、Spotify、Apple Musicといった配信プラットフォームでも標準となっている。つまり、映像・音声制作に関わるなら、もはや知らないでは済まされない必須知識なのだ。

このガイドでは、ラウドネスの本質を、専門用語に頼らず、誰にでもわかる形で解説していく。初心者から中級者まで、実務で使える知識が身につく構成になっている。

このガイドで得られるもの:

  • ラウドネスの基本概念と、なぜ必要なのかが理解できる
  • 各配信プラットフォームの基準値と、その背景にある考え方がわかる
  • 実務で即使える測定・調整のノウハウ(有料セクション)
  • プロが実践する、音質を保ちながら基準を満たすテクニック(有料セクション)

音量調整は、もはや「なんとなく耳で聞いて決める」時代ではない。

正しい知識を持てば、あなたの作品はどんな環境でも、意図した通りの音で届けられる。

STEP 2:基本のキ — 音量 vs ラウドネス

音の大きさを語るとき、多くの人が混同しているのが「dB(デシベル)」と「ラウドネス」だ。

この2つは似ているようで、まったく異なる概念である。ここを理解しないと、いくら調整しても「なぜか音が揃わない」という迷路にはまることになる。

dB(デシベル)は「機械の目」

dBは、物理的なエネルギーの強さを測る単位だ。

マイクが拾った空気の振動を、そのまま数値化したもの。機械的で、客観的で、誰が測っても同じ値が出る。

例えば、ピークメーターで「-3dB」と表示されていれば、それは信号が最大値に対してどれくらいのレベルかを示している。

しかし、ここに落とし穴がある。

同じ-3dBでも、低音のズシンという音と、高音のキーンという音では、人間の耳には全く違う大きさに聞こえるのだ。

ラウドネスは「人間の耳」

一方、ラウドネスは人間が実際に感じる音の大きさを数値化したものだ。

「うるさい!」と感じるか、「ちょうどいい」と感じるか。その体感を科学的に測定できるようにした指標である。

例えば:

  • 赤ちゃんの泣き声(高音)は、同じdBでも大きく感じる
  • ドラムのキック(低音)は、同じdBでも小さく感じる

ラウドネスは、この人間の耳の特性を織り込んで計算される。だから、周波数が違っても「体感的に同じ大きさ」に揃えられるのだ。

なぜ2つの概念が必要なのか?

  • dB → 機材の限界を守るため(クリップ防止、ヘッドルーム確保)
  • ラウドネス → 視聴者の体験を揃えるため(快適さ、聴きやすさ)

制作現場では、両方を見ながら調整する必要がある。片方だけでは、プロの音にはならない。

STEP 3:耳のヒミツ — 得意と苦手

人間の耳は、実に不思議な構造をしている。

すべての音を平等に聞いているように感じるが、実際には周波数によって感度が全く違う。この特性を理解しないと、ラウドネスの本質は見えてこない。

高い音は「敏感」

人間の耳が最も敏感なのは、2kHz〜4kHz付近だ。

この帯域は、人間の声、特に子音(「サ」「タ」「カ」など)が集中している領域。進化の過程で、人間同士のコミュニケーションに最適化されたと考えられている。

だから:

  • 赤ちゃんの泣き声は、小さな音量でも耳に刺さる
  • アラーム音や警告音は、この帯域を使っている
  • ボーカルの存在感は、この帯域で決まる

同じエネルギー(dB)でも、高音は実際より大きく感じるのだ。

低い音は「鈍感」

一方、低音域(100Hz以下)に対しては、人間の耳は驚くほど鈍い。

ズシンと体に響く重低音。それを「大きい」と感じさせるには、実は相当なエネルギーが必要になる。

映画館の爆発シーンや、クラブの重低音が強力なシステムを必要とするのは、このためだ。

これがラウドネス測定の根幹

ラウドネスメーターは、この耳の得意・苦手を計算式に組み込んでいる。

具体的には:

  • 高音域(2〜4kHz)は重み付けを大きく
  • 低音域(100Hz以下)は重み付けを小さく

こうすることで、機械的なdBではなく、人間が実際に感じる音の大きさを数値化できるのだ。

実務での影響

この特性を知っていると、こんな判断ができるようになる:

「ラウドネスは基準内なのに、なぜか耳障りに感じる」 → 高音域が過剰になっている可能性

「低音をブーストしたのに、ラウドネスがあまり上がらない」 → 当然。低音は数値に反映されにくい

つまり、周波数バランスを見ながら調整することが、プロとアマの分かれ道になる。

STEP 4:単位の読み方 — LUFS(ラフス)

ラウドネスを語るうえで避けて通れないのが、**LUFS(Loudness Units relative to Full Scale)**という単位だ。

「ラフス」と読む。慣れないうちは混乱するが、仕組みさえわかれば非常にシンプルだ。

補足: LKFSという単位もあるが、これはLUFSと同じものを指す。ITU(国際電気通信連合)がLKFS、EBU(欧州放送連合)がLUFSという名称を使っているだけで、測定方法も数値も同一だ。

マイナスの世界

LUFSは、0を最大値として、そこからどれだけ小さいかを表す。

つまり:

  • 0 LUFS = 理論上の最大音量(デジタルクリップ寸前)
  • -10 LUFS = 最大から10下がった音量
  • -20 LUFS = 最大から20下がった音量

数字が小さいほど(0に近いほど)、音が大きい。ここが直感に反するので、最初は戸惑う人が多い。

具体例で理解する

主要プラットフォームの基準値を見てみよう:

  • Spotify: -14 LUFS
  • YouTube: -14 LUFS
  • Apple Music: -16 LUFS
  • 日本の地上波放送: -24 LUFS(ARIB TR-B32)

つまり:

  • Spotify(-14 LUFS)は、Apple Music(-16 LUFS)より音が大きい
  • 地上波放送(-24 LUFS)は、YouTube(-14 LUFS)よりかなり小さい

この数値の違いには、それぞれ明確な理由がある(有料セクションで詳述)。

なぜマイナス表記なのか?

デジタルオーディオの世界では、**0dBFS(Full Scale)**が絶対に超えてはいけない上限だ。

ここを超えると、音が歪んで破綻する。いわゆる「クリップ」だ。

LUFSも同じ考え方で、0を天井として、そこから「どれだけ余裕があるか」を示している。

この余裕をヘッドルームと呼ぶ。プロの現場では、このヘッドルームを確保しながら、基準値に合わせていく技術が求められる。

初心者が陥る罠

「-14 LUFSに合わせればいいんでしょ?」

そう思って、全体を単純に持ち上げたり下げたりする。これは大きな間違いだ。

ラウドネスは平均値であって、ピーク値ではない。つまり:

  • 音のバランスが崩れていれば、数値だけ合わせても意味がない
  • ダイナミクス(音の強弱の幅)を潰せば、数値は簡単に上がるが音質は死ぬ

数値は目安であって、絶対ではない。

プロは、数値と耳の両方を使って判断している。

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STEP 5:配信サービスの魔法

ここまで読んで、こう思った人もいるだろう。

「じゃあ、YouTubeやSpotifyは、どうやって音量を揃えているのか?」

その答えが、ラウドネスノーマライゼーションだ。

ラウドネスノーマライゼーションとは

簡単に言えば、配信サービスが自動で音量を揃えてくれる機能である。

仕組みはこうだ:

  1. あなたが動画や音楽をアップロードする
  2. プラットフォームがラウドネスを自動測定
  3. 基準値(-14 LUFSなど)に合わせて、再生時の音量を調整

視聴者が再生ボタンを押したとき、すでに適切な音量で流れるようになっている。

つまり、私たちがリモコンに手を伸ばさなくても、快適に視聴できるのは、この仕組みのおかげだ。

「勝手に調整される」の真実

ここで重要なのは、元のデータは変更されないということ。

プラットフォームは、再生時にボリュームを上げ下げしているだけで、あなたがアップロードしたファイル自体には手を加えていない。

具体的には:

  • 基準より大きい音源 → 再生時に音量を下げる
  • 基準より小さい音源 → 再生時に音量を上げる(ただし、ピークがクリップしない範囲で)

つまり、大きすぎる音でアップしても、意味がない。むしろ、音質を犠牲にしただけで終わる。

プラットフォームごとの違い

主要サービスの基準値を再確認しよう:

プラットフォーム基準値特徴YouTube-14 LUFS音楽系は少し大きめSpotify-14 LUFSユーザーが設定変更可能Apple Music-16 LUFS音楽の品質重視Amazon Music-13〜-14 LUFSプラットフォームによって差あり

制作者が知っておくべきこと

ラウドネスノーマライゼーションがあるからといって、何も考えずにアップしていいわけではない。

プロが意識しているのは:

  • 基準値に合わせて制作すれば、音質劣化を防げる
  • 基準より大きく作ると、自動で下げられて損をする
  • 基準より小さいと、上げられるがピークが制限される

つまり、最初から基準値を狙って作るのが正解だ。

そして、ここからが本題になる。

「じゃあ、実際にどうやって測定して、調整するのか?」

その具体的な手法、ツールの使い方、プロが実践している細かなテクニックは、有料セクションで徹底解説する。

STEP 6:これからの音楽の楽しみ方

ラウドネスという技術が普及したことで、音楽業界に大きな変化が起きている。

それが、「音圧戦争」の終焉だ。

音圧戦争とは何だったのか

1990年代から2000年代、音楽業界では異常な競争が繰り広げられていた。

「少しでも目立つために、音を大きくしろ」

CDやラジオで流れたとき、他の曲より大きく聞こえれば、リスナーの耳を引ける。そう信じられていた。

その結果:

  • コンプレッサーで音をぎゅうぎゅうに圧縮
  • リミッターで天井まで持ち上げ
  • ダイナミクス(音の強弱)を完全に潰す

確かに数値上は「大きい音」になった。しかし、その代償は大きかった。

音楽本来の呼吸感、空気感、抑揚がすべて失われたのだ。

ラウドネスが変えたもの

ラウドネスノーマライゼーションの登場で、状況は一変した。

「どんなに大きく作っても、配信時に自動で下げられる」

つまり、音を潰して大きくする意味がなくなったのだ。

むしろ:

  • ダイナミクスを残した方が、表現力が豊かになる
  • 音質を優先した方が、リスナーに喜ばれる
  • 基準値に合わせて丁寧に作る方が、プロフェッショナル

こうして、音楽制作の価値観が**「音圧」から「音質」へ**とシフトしていった。

「音の良さ」の時代

今、プロが追求しているのは:

  • ダイナミクスの美しさ → 静かな部分と盛り上がる部分の対比
  • 周波数バランス → 各楽器が明瞭に聞こえる空間設計
  • トランジェント(立ち上がり)の鮮明さ → ドラムやギターの輪郭

無理に音を大きくするのではなく、音楽そのものの魅力を最大化する方向に進化している。

実際、SpotifyやApple Musicでヒットしている楽曲を分析すると、-14 LUFS前後で、適度なダイナミクスを保っているものが多い。

リスナーにとっての恩恵

この変化は、音楽を聴く私たちにとっても大きな意味がある:

  • プレイリストを流しっぱなしにできる快適さ
  • アーティストの意図した音で楽しめる
  • 耳の疲労が少ない、長時間のリスニングが可能

ラウドネスは、音楽体験を守る技術なのだ。

ここから先は、有料エリアです

無料セクションでは、ラウドネスの本質と、なぜこれが重要なのかを解説してきた。

しかし、実務で本当に必要なのは**「具体的な方法論」**だ。

有料セクションで学べること

✅ 実践編:測定と調整の完全ガイド

  • 主要DAWでのラウドネスメーター設定方法
  • プラグインの選び方と使い分け(無料/有料)
  • ピークとラウドネスの両立テクニック

✅ プラットフォーム別の最適化戦略

  • YouTube/Spotify/Apple Music、それぞれの攻略法
  • 音楽、ポッドキャスト、映像作品での違い
  • マスタリングとミックスの段階別アプローチ

✅ プロが実践する高度なテクニック

  • ダイナミクスを残しながら基準値を満たす方法
  • EQとコンプを使った周波数別コントロール
  • トゥルーピークとサンプルピークの違いと対処法

✅ トラブルシューティング集

  • 「基準値なのに音が小さく感じる」の原因と解決
  • 「ラウドネスが上がらない」パターン別診断
  • プラットフォームのアルゴリズム変更への対応

✅ ケーススタディ:ジャンル別の実例

  • EDM、ポップス、アコースティック、ポッドキャストなど
  • それぞれの最適なラウドネス設計
  • 実際の波形とメーター数値を見ながら解説

こんな人に特におすすめ

  • YouTubeやポッドキャストで音のクオリティを上げたいクリエイター
  • ストリーミング配信を前提とした楽曲制作者
  • クライアントワークで確実な品質を求められるエンジニア
  • 音響を学び始めたばかりで、実践的な知識を求めている学生

理論だけでなく、明日から使える実践知識が詰まっている。

ラウドネスは、もはや「知っていると有利」ではなく、「知らないと仕事にならない」レベルの必須スキルだ。

適切な音量で作品を届けることは、クリエイターとしての最低限の責任でもある。

このガイドが、あなたの制作活動を次のステージに引き上げる一助となれば幸いだ。

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