「なぜ、同じ.mp4なのに再生できないファイルがあるんだろう?」
映像制作やライブ配信の現場で、こんな経験はありませんか?
- クライアントから受け取った動画ファイルが編集ソフトで読み込めない
- 書き出した動画がスマホでは再生できるのに、テレビでは映らない
- 「コーデックが対応していません」というエラーの意味がわからない
- .mov、.mp4、.mkvなど拡張子の違いが何を意味するのかよくわからない
私は映像システムのテクニカルディレクターとして、またATEM認定トレーナーとして、これまで数多くの現場でこうした「動画ファイルのトラブル」に遭遇してきました。
そして気づいたのです。多くの映像制作者が「コンテナ」と「コーデック」の違いを正しく理解していないということに。
この2つの概念を理解するだけで、動画ファイルにまつわるトラブルの8割は解決できます。そして何より、適切なフォーマットを選択できるようになることで、作業効率が劇的に向上します。
コンテナとコーデックの基礎知識
「コンテナ」と「コーデック」の違いを明確に説明できる もう「拡張子が同じなのに再生できない」という現象に悩まされることはありません。なぜそうなるのか、その仕組みを根本から理解できます。
用途に応じた最適なフォーマットを選択できる 編集用、納品用、Web配信用、アーカイブ用。それぞれの目的に合ったコンテナとコーデックの組み合わせを、自信を持って選べるようになります。
トラブル発生時に原因を特定できる 「再生できない」「読み込めない」というトラブルが起きたとき、コンテナの問題なのかコーデックの問題なのかを切り分け、適切な対処ができるようになります。
クライアントや同僚に的確な指示が出せる 「H.264のMP4で納品してください」「ProResの422 HQでお願いします」といった指示の意味を正しく理解し、自分でも的確に伝えられるようになります。
こんな方におすすめです
- 映像制作を始めたばかりで、ファイル形式の基礎を固めたい方
- YouTubeやライブ配信を行っていて、書き出し設定に自信がない方
- 動画編集ソフトを使っているが、なんとなくで設定を選んでいる方
- 映像制作会社で働き始め、専門用語についていけないと感じている方
- ATEM Mini などのスイッチャーで収録を行い、後工程との連携を理解したい方
逆に、すでにポストプロダクションで何年も経験を積んでいるプロフェッショナルの方には、基礎的すぎる内容かもしれません。ただ、後輩への教育資料として活用いただくことは可能です。

まずは結論から:コンテナとコーデックの違い
本題に入る前に、最も重要なポイントをお伝えします。
コンテナ(Container)= 入れ物 動画、音声、字幕などのデータをまとめて格納する「箱」のことです。ファイルの拡張子(.mp4、.mov、.mkvなど)は、このコンテナの種類を示しています。
コーデック(Codec)= 圧縮・展開の方式 映像や音声のデータを圧縮(エンコード)したり、展開(デコード)したりするための「ルール」です。H.264、H.265、ProRes、DNxHDなどがこれにあたります。
この2つは、よく「お弁当箱」と「中身の料理」に例えられます。
┌─────────────────────────────────┐
│ コンテナ(お弁当箱) │
│ 例:.mp4 / .mov / .mkv │
│ │
│ ┌─────────┐ ┌─────────┐ │
│ │映像データ│ │音声データ│ │
│ │(コーデック)│ │(コーデック)│ │
│ │ H.264 │ │ AAC │ │
│ └─────────┘ └─────────┘ │
│ │
│ ┌─────────┐ ┌─────────┐ │
│ │ 字幕 │ │メタデータ│ │
│ └─────────┘ └─────────┘ │
└─────────────────────────────────┘
copy
同じお弁当箱(.mp4)でも、中に入っている料理(H.264なのかH.265なのか)は違うことがある。だから拡張子が同じでも再生できないファイルが存在するのです。
お弁当を食べるには、箱を開ける能力と、中の料理を食べる能力の両方が必要ですよね。動画ファイルも同じで、再生ソフトやデバイスは「コンテナを開く能力」と「コーデックを解読する能力」の両方を持っている必要があります。
なぜこの知識が重要なのか?
「難しそうだし、別に知らなくても動画は作れるでしょ?」
確かに、編集ソフトが自動で設定してくれることも多いです。しかし、この基礎知識がないと以下のような場面で困ることになります。
- 納品先から「この形式では受け取れない」と言われたとき
- 編集ソフトのタイムラインが重くなり、プロキシ編集が必要になったとき
- ライブ配信と収録を同時に行い、それぞれ最適な設定にしたいとき
- 長期保存用のアーカイブ形式を決めるとき
現場で「なんとなく」ではなく「根拠を持って」判断できる。それがプロフェッショナルとアマチュアを分ける境界線だと、私は考えています。

【第1章】コンテナを深く理解する 主要なコンテナ形式(MP4、MOV、MKV、AVI、MXFなど)それぞれの特徴、メリット・デメリット、そしてどの場面で使うべきかを解説します。「なんとなくMP4にしておけばいい」という曖昧な理解から卒業しましょう。
【第2章】コーデックを深く理解する H.264とH.265の違いは? ProResにはなぜ種類があるの? 配信向きのコーデックと編集向きのコーデックは何が違う? これらの疑問にすべて答えます。
【第3章】映像コーデックと音声コーデックの組み合わせ 動画ファイルには映像と音声、それぞれにコーデックがあります。よく使われる組み合わせと、その選び方の基準を紹介します。
【第4章】目的別・最適フォーマット選択ガイド 編集用、Web配信用、放送納品用、長期アーカイブ用など、目的に応じたベストな選択肢を具体的に提示します。現場ですぐに使える実践的な内容です。
【第5章】トラブルシューティング】 「再生できない」「読み込めない」「画質が悪い」「ファイルサイズが大きすぎる」といった、よくあるトラブルの原因と解決法をまとめました。
【付録】コーデック・コンテナ早見表 主要なコンテナとコーデックの対応関係、ビットレートの目安などを一覧表にまとめています。現場で迷ったときにすぐ参照できる資料です。
最後に:この知識への投資について
私がこの記事を書こうと思ったのは、現場で何度も同じ質問を受けてきたからです。
「この動画、なんで再生できないんですか?」 「書き出し設定、どれを選べばいいですか?」 「ProResって何ですか?」
その都度、一から説明してきました。でも、体系的にまとまった日本語の資料が意外と少ないことに気づいたのです。
英語の技術文書やメーカーのホワイトペーパーを読み漁り、実際の現場で検証を重ね、わかりやすく整理したのがこの記事です。
本来、この知識を得るには専門書を何冊も読むか、高額なセミナーに参加するか、あるいは現場で何年も経験を積む必要があります。
この記事は、そのエッセンスを凝縮した内容になっています。


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