ゲート・コンプ・リミッター・EQ ── 正しい順番で設定すれば、音は別物になる。あなたの配信の音、もったいないことになっていないか?

現場でATEMを使っているプロに聞くと、映像の設定には時間をかけるが、音声の設定は「なんとなく」で済ませているケースが驚くほど多い。
ライブ配信で視聴者が離脱する理由を分析したデータを見てみよう。StreamElementsが2023年に公表したレポートによれば、視聴者が配信を離脱する理由の第1位は「映像の乱れ(35%)」ではなく、「音声の聞き取りにくさ(41%)」だ。映像のクオリティを磨くよりも、音声を整える方が視聴維持率への影響は直接的なのである。
ATEMスイッチャーには、放送局グレードの音声処理エンジン「Fairlight(フェアライト)オーディオ」が標準搭載されている。これは映画やドラマの音響制作で世界的に使用されているFairlightのDSP技術をATEMに内蔵したもので、単なる「ミキサー機能」ではない。EQ(イコライザー)・ゲート・コンプレッサー・リミッターがチャンネルごとに独立して動作する、本格的な音声処理システムだ。
ところが、このFairlightオーディオを使いこなせているオペレーターは、現場感覚で10人中3人程度しかいない。残り7割は、機能の存在は知っていても「何をどの順番で設定すればいいか」がわからず、デフォルト設定のまま本番を迎えている。

なぜ「順番」が重要なのか。たとえば、コンプレッサーをEQより先に設定してしまうと、マイクが拾った低音のエアコンノイズや足音の振動まで一緒にコンプが「持ち上げて」しまう。結果として、本来消えていたはずのノイズが意図せず強調されるという逆効果が生まれる。正しい順番で設定した場合と、間違った順番で設定した場合では、同じATEMを使っても音の仕上がりに明確な差が出る。

音声処理の信号が流れる正しい順番は「入力ゲイン調整 → EQ → ゲート → コンプレッサー → リミッター → マスター出力」の6ステップだ。ATEMのFairlightも、内部的にこの順序で信号を処理している。

この記事では、各ツールが「何をするものなのか」という基本的な理解から始まり、現場で即使える具体的な数値設定と、プロが身につけるべきワークフローを完全公開する。有料部分では、設定値の根拠となる放送規格(EBU R128)との関係、各パラメーターの意味、そして「なぜその数値なのか」の理由まで丁寧に解説している。
ATEM Mini、ATEM Mini Pro、ATEM Mini Extremeいずれにも適用できる内容だ。ソフトウェア版のATEM Software Controlでの操作手順に準拠している。

「映像は一流、音声は三流」という現場からの脱却。その第一歩が、この記事にある。


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