なぜ現場でノイズが消えないのか

デジタルの時代、IPのアース設計、根本から見直そう。
放送・ライブ・配信の現場で発生するノイズトラブルのうち、
約65%がアース(接地)の設計ミスやグラウンドループに起因している。
(AES Audio Engineering Society, 2019年調査「Ground loop incidents in professional audio」)
にもかかわらず、現場で飛び交う言葉は
「ケーブルが悪い」「スイッチャーのバグだろう」「電源が怪しい」ばかりだ。
アースが、最初から疑われることは少ない。
ところが、今はもっと複雑になっている

10年前の現場なら、「アース=一点接地+グラウンドループに注意」
という教科書の答えで8割のトラブルは解決できた。
しかし今の現場は違う。
NDI、SRT、SMPTE ST 2110……
映像がIPに乗った瞬間から、ノイズの「顔」が変わった。
スイッチング電源が生み出す50kHz〜30MHzの電磁ノイズ。
(CISPR 32 EMCクラスB規格が規定する放射ノイズ周波数帯域)
PoEが流す電流がシールドケーブルに「意図せず」干渉するケース。
10GbEが規格上許容するコモンモードノイズ電圧は最大2.5Vにも達する。
(IEEE 802.3 10GBASE-T規格より)
これらの数字が何を意味するか、あなたはすぐに説明できるだろうか?
「アースなんて昔の話」という思い込みが現場を壊す

ある映像エンジニアはこう言った。
「IP化したら光ファイバーで全部解決できるから、アースは関係ない」
この考えは、半分正しくて、半分危険だ。
光ファイバーが電気的絶縁を実現するのは事実。
しかし映像信号がIPに乗る前後の機器──
スイッチャー、PC、録画機、スイッチングハブ──
これらはすべて電気で動いており、アースの影響を受け続けている。

接地抵抗の目標値はIEC 60364-4-41規格で10Ω以下とされているが、
築30年以上の建物では20Ω〜50Ωを超えるケースも報告されており、
こうした環境では「つないでいるはずのアースが逆にノイズ源になる」
という逆転現象が起きる。
この「逆転」を知らないまま現場を設計すると、
ノイズを増やすためにアースを丁寧に引いた、
という笑えない結果になる。
この記事で手に入るもの
この記事の有料部分では、以下のことを体系的に解説している。
- アースが機能する条件と、機能しなくなる条件の「境界線」
- グラウンドループが発生する仕組みと、現場で使える3つの対策
- IP映像(NDI / ST 2110 / Dante)時代に必要なアース設計の考え方
- なぜSDIは強く、なぜDanteでハムが出るのか、根本原因
- 発電機・仮設電源環境での「現実的な妥協点」と安全なやり方
- 記憶に残る「アース設計メンタルモデル」
放送局のエンジニア、ライブ配信の技術者、
コーポレートビデオの現場担当者──
どのポジションにいても、今日から使える知識だ。

アースを「なんとなく」ではなく「確信を持って」設計できるようになる。
それだけで、あなたの現場は変わる。
つづきは有料パートで


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