本番で「カクつき」が出た——その瞬間、何が起きていたのか
信頼していたはずの機材が、本番で牙を剥いた

インタビュー撮影の現場だった。被写体に向かってゆっくりとカメラをパンする——それだけの絵がほしかった。ジンバルを使えば問題ない、そう思っていた。
ところが、収録後に映像を確認すると、パンが始まった直後に画面が「カクッ」と一瞬跳ねた。機材を疑い、ジンバルの再キャリブレーションを試みた。また出た。二度目も、三度目も、同じ場所で同じ挙動が再現した。
原因はジンバルではなかった。カメラ本体に内蔵されていた「ブレ補正機能」が、ジンバルの動作と干渉していた。
なぜ起きるのか
現代のカメラには、独立して動く3系統のブレ補正が搭載されている。
レンズ内部の光学系を動かすOIS(光学式)は、手の微細な震えのような高周波の振動を得意とする。撮像センサーを物理的に5方向へずらすIBIS(ボディ内式)は、回転方向のブレを含めて吸収する。映像を電子的にクロップしながら補正するDIS(電子式)は、歩行時の大きな上下動に対応する代わりに、記録画角が狭くなる。
ジンバルは、これらとは別に、3つのブラシレスモーターで「カメラの向きそのもの」を制御する外部装置だ。
問題は、ジンバルもカメラ内蔵の補正も、まったく同じ「揺れを打ち消す」という目的で独立して動いていることにある。

パンを始めた瞬間、ジンバルのモーターは「右へ回れ」と動く。カメラ内部のIBISは同時に「右方向への動きを揺れと判断し」、センサーを左へ押し戻そうとする。センサーが物理的な可動限界に達した瞬間、制御システムはセンサーを強制的に中央へ引き戻す——これが映像上の「カクッ」として記録される(参考:ソニー公式技術資料「α7S III 手ブレ補正設計仕様」)。

超広角レンズではさらに深刻な症状が出る。IBISによるセンサーの微小移動が、広角特有の強いパースペクティブを刻々と変化させ、画面周辺部が波打つような歪みとして現れる。フルサイズセンサーのカメラはAPS-Cに比べてセンサーの物理移動量が大きく、この歪みが映像に出やすい。
あなたの機材が悪いのではない
2人のドライバーが1台の車のハンドルを同時に握っている——これがジンバルとIBISを同時に動かしている状態だ。どちらも正しいことをしているつもりが、互いの操作が干渉し合い、車は蛇行する。
高価な機材を使っていても、この状態では性能は発揮できない。問題は組み合わせ方にある。
正解は、存在する
補正機能のオン/オフを「どの状況で・どのカメラで・どのモードで」切り替えるか——そのルールを知っていれば、カクつきも歪みも防ぐことができる。
有料部で手に入るもの

- 手ブレ補正3方式(OIS/IBIS/DIS)とジンバルの役割分担の正解
- よくある3つのミスとその正解(Panasonic・Sony・Canonの実機例で解説)
- ジンバル3軸のバランス調整を確認するステップバイステップ手順
- 歩行衝撃を体で吸収する「忍者歩き」の具体的プロトコル
- 180度シャッタールールの根拠と数値(フレームレート別)
- ペイロード選定で失敗しないための計算基準
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この設定を知らないまま本番を迎えると、撮り直しの判断を現場でしなければならない。次の収録で同じ事故を防ぐ手順が、このあとにある。


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