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複数スイッチをまたぐとNDIが止まる理由──IGMPを制する者がIP映像伝送を制する

2026 1/26
動画の学校 通信
2026-01-252026-01-26

スタジオに2台目、3台目のスイッチングハブを追加した瞬間、NDIの映像が途切れた経験はないだろうか。

1台のスイッチでは問題なく動いていたシステムが、規模を拡張した途端に不安定になる。現場では「とりあえず再起動」で一時的に復旧するものの、根本原因が分からないまま本番を迎える──こうした状況に直面している映像技術者は、業界全体の約68%に達するという調査結果がある(※1)。

問題の本質は、物理的な配線ではない。目に見えない「論理的な通信制御」にある。

NDI 5の1080p60信号は、1ストリームあたり約125Mbps(※2)の帯域を消費する。これは一般的な1Gbpsネットワークの12.5%に相当し、4K60では250Mbps(25%)まで上昇する。スイッチが複数台になると、この映像データがどの経路を通り、どのポートから出力されるかを制御する仕組みが必須となる。

その仕組みこそがIGMP(Internet Group Management Protocol)だ。

なぜ1台では動くのに、複数台では止まるのか

単一スイッチ環境では、マルチキャスト通信は比較的単純だ。IGMPスヌーピング機能が有効であれば、スイッチは「どのポートにNDIレシーバーが接続されているか」を自動的に学習し、該当ポートにのみ映像パケットを転送する。

しかし、スイッチが2台以上になると状況は一変する。

スイッチ間を接続するアップリンクポートには、複数のVLANやマルチキャストグループが混在する。この時、各スイッチが独立してIGMP管理を行うと、以下の3つの障害パターンが発生する。

パターン1:全ポートフラッディング
IGMPクエリア(マルチキャスト管理の司令塔)が不在、または複数のスイッチに重複して存在する場合、マルチキャストパケットは「ブロードキャスト」として扱われ、全ポート(全48ポートなら48ポート全て)に送信される。NDI信号125Mbpsが10ストリーム流れれば1.25Gbps、つまり1Gbpsリンクの125%に達し、物理的に転送不可能となる(※3)。

パターン2:スイッチ間でのパケットロス
コアスイッチとリーフスイッチ間でPIM-SM(Protocol Independent Multicast – Sparse Mode)が未設定の場合、VLAN境界を越えるマルチキャストルーティングが機能しない。結果として、スイッチAに接続されたNDIソースの信号が、スイッチBに接続されたレシーバーに到達しない。

パターン3:遅延ジッター増大
タグVLAN(IEEE 802.1Q)による複数VLAN伝送時、優先制御(QoS)が適切に設定されていないと、映像パケットと事務データが同等に扱われる。これにより、プリンターの印刷ジョブやファイルサーバーアクセスが発生した瞬間、NDIの遅延が0.5ms未満から3-5msまで跳ね上がるケースが報告されている(※4)。

IGMPとVLANの正しい設計が解決する3つの課題

複数スイッチ環境でNDIを安定稼働させるには、ネットワークを「物理層」と「論理層」の2つの視点で設計する必要がある。

この設計が適切に行われると、以下の3つの成果が得られる。

成果1:帯域使用率の最適化
IGMP Snooping v3とPIM-SMの組み合わせにより、不要なポートへのマルチキャスト転送を100%排除できる。10ストリームのNDI運用時、未設定環境では全ポート合計で6Gbps(48ポート × 125Mbps)のトラフィックが発生するのに対し、適切な設定では必要なポート間のみ、つまり1.25Gbps(10ストリーム分のみ)まで削減される。削減率は約79%に達する(※5)。

成果2:障害の局所化
VLANによる論理分割は、映像系トラブルが事務系ネットワークに波及するリスクを0%にする。例えば、スタジオ内のNDIカメラ8台が同時起動した際、VLAN未設定では事務用PC(同一L2ネットワーク上の全デバイス)が3-8秒間通信不能になるが、VLAN分離環境では事務系への影響は発生しない(※6)。

成果3:トラブルシューティング時間の短縮
論理構成のドキュメント化により、障害特定時間が平均45分から7分へ短縮される(短縮率84%)(※7)。「物理的には繋がっているが通信できない」という状態が、設計意図によるものか障害なのかを即座に判別できるためだ。

しかし、これらの成果を得るには、具体的な設定手順と、陥りやすい落とし穴を知る必要がある。

この記事の有料部分で得られる知識

有料部分では、複数スイッチ環境におけるIGMP設定の実践手順を、設定漏れが発生しやすい箇所まで含めて解説している。

具体的には、以下の内容を段階的に学べる構成となっている。

第1章:IGMPとPIM-SMの役割分担
マルチキャスト制御における「IGMP」「IGMP Snooping」「PIM-SM」の3つの技術が、それぞれどのレイヤーで何を担当するのか。コアスイッチとリーフスイッチで設定内容がどう異なるのかを、ネットワーク階層ごとに整理する。

第2章:VLAN設計の実践パターン
映像・音声・制御の3用途を、何個のVLANに分割すべきか。タグVLAN(IEEE 802.1Q)とアンタグVLANの使い分け基準。スイッチ間接続における「トランクポート」の設定で見落としがちな2つのチェック項目。

第3章:スイッチスタッキングという選択肢
複数の物理スイッチを1台の論理スイッチとして扱う「スタッキング」構成のメリットと、導入時の注意点。ファームウェアバージョン不一致が引き起こす障害と、その回避手順。

第4章:トラブル予防のためのドキュメント化
VLAN ID、マルチキャスト設定、QoS設定を記録すべき5つの項目。トラブル時に5分以内で原因を特定するための「設計図」の作り方。

第5章:記憶定着のためのメンタルモデル
IGMP設定を「交通整理」に例えた記憶術。現場で即座に思い出せる3つのチェックリスト。

現場で即座に使える設定手順と、設定ミスを防ぐためのチェックポイントを、全て網羅している。

ここから先は有料部分となります

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