Art-Net・sACNの先で起きる末端器具のちらつきをなくす。
1本の線に器具を30台つなぎ、卓のフェーダーをゆっくり上げていく。手前の28台は素直に明るくなる。ところが最後の2台だけが、ときおり小さく震える。ノードの設定を疑い、スイッチを疑い、ファームウェアを疑い、器具を入れ替えても、震えは末端についてまわる。
※この冒頭は、後述の計算式を当てはめて組み立てた想定の場面だ。記事内の数字は、出典を示したもの以外はすべて式に当てはめた試算であり、特定の現場の実測値ではない。

原因がネットワークにも器具にもなく、線の「行き止まり」にあると気づくまでの遠回りに、身に覚えのある人もいるはずだ。この記事では、数えられるものは数えて書く。
Art-Net(1998年)やsACN(ANSI E1.31、2009年)のおかげで、照明の信号はイーサネットに乗り、ノードを器具の近くまで運べるようになった。だが、ノードから器具までの最後の区間は、いまも1986年に生まれたDMX512の電気の線だ(ENTTEC「A Short History of DMX512」)。ネットワークが最新でも、器具につながる最後の区間は、40年前のルールで動いている。
このルールには、数字で語れる急所がある。

DMXの1フレームは、512チャンネル+開始コードの513スロット。1スロットは44マイクロ秒だから、513×44=22,572マイクロ秒。ここに信号の切れ目(ブレーク)の92マイクロ秒と、その直後の空き12マイクロ秒(どちらも送信側が守る最小値)を足すと、22,676マイクロ秒、つまり約22.7ミリ秒になる(数値はENTTEC「What is DMX512?」)。1秒を22.7ミリ秒で割れば約44.1回。これが「44Hz」の正体だ。
では、この1フレームが壊れたら何が起きるか。59.94pの映像は1コマが16.68ミリ秒(1001÷60000秒)。22.68÷16.68=1.36。DMXのたった1フレームの乱れが、映像の1.36コマ分の時間にわたって、器具を誤った値で動かしうる計算になる。

そして壊す犯人は、器具でもソフトでもない。線の端で跳ね返った信号だ。跳ね返る割合は、線の種類と端の処理しだいで、26.3%から50%、最悪の場合は100%にまでなる(計算式は有料部にある)。
これは、あなたの腕や、機材選びのセンスの問題ではない。浴槽で考えるとわかりやすい。浴槽の片側で水を押すと、波が反対側の壁にぶつかって戻ってくる。戻ってきた波は、次に押した波と重なって、水面をでこぼこにする。水面を落ち着かせたいなら、壁を砂浜に変えればいい。波は斜面で力を失い、戻ってこなくなる。DMXの線の端で起きているのは、これと同じ現象だ。悪いのは押した人ではなく、行き止まりの壁の作りである。
方法はある。線の「端」と「形」と「本数」を、数字で決めればいい。原因は6つの型に分けられ、どれに当たるかは現場で確かめられる。ただし、ここで手順を書けば、あなたは半分だけ知った状態で現場に入り、かえって迷う。だから詳細は有料部にまとめた。
この記事の有料部で手に入るもの
- 末端の器具だけが震える理由を、22.7ミリ秒のフレームと反射の式から説明する仕組み編
- 線の状態を電源オフのまま数分で確かめ、合格・要対策・危険に分ける判定表
- 器具の台数と線の長さから、必要な本数を割り出す計算手順(170台の例つき)
- よくあるミス5つと、見落としやすい珍しいトラブル3つの正解
- 現場入りの前後に埋めるだけの記録シート

有料部を読み終えたとき、あなたの手元には、次の現場ですぐ使える配線の設計図、測定の判定表、記録シートの3点が揃っている。


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