搬入二日目。仮設の電源に、機材を一台ずつ足していく。配信用のパソコン、モニター、ネットワークスイッチ、エンコーダー。二十六台目を挿した瞬間、ストンと落ちた。

機材を疑う。ケーブルを疑う。挿す順番を変えると、今度は落ちない。翌日、別の会場で同じ構成を組むと、また落ちる。壊れた機材は一台もないのに、だ。この遠回りに身に覚えのある人もいるはずだ。
※この冒頭は、後述の計算式を当てはめて組み立てた想定の場面だ。記事内の数字は、出典を示したもの以外、すべて式に当てはめた試算であり、特定の現場の実測値ではない。
仮設電源や家庭の分電盤には、感電を防ぐために「30mA」という数字の漏電ブレーカーが入っていることがある(mAは電流の単位。1mAは1アンペアの1,000分の1)。この品は、電気が30mA逃げたら止める。動作時間は0.1秒以内だ(出典:electric-facilities.jp「配線用遮断器・漏電遮断器の機能と選定」)。しかも、15mAまでは動作しない決まりになっている。30mAの50%という規定だ(出典:三菱電機FA FAQ「定格不動作電流」、JIS C 8201-2-2)。
ところで、アース線のついた機材は、壊れていなくても、電源回路の作りのせいで、いつも小さな電気をアース側へ逃がしている。安全規格上の上限は概ね3.5mA、機材1台あたりの実際の値は数百µA〜数mAとされる(出典:hatsudenki.jp「パソコンって漏電しているの?」、IEC 62368-1)。そしてこの小さな電気は、台数が増えれば、そのまま足し算になる。上限ぎりぎりの機材なら、4台で14mA(3.5×4)、5台で17.5mA(3.5×5)だ。

冒頭の場面に戻ろう。1台あたり0.5mAと仮定すると、26台で13.0mA(0.5×26)。15mAには、まだ届いていない。そこへ、雨で湿ったコネクタから2.5mAが漏れたとする。合計は15.5mA(13.0+2.5)。落ちてもおかしくない領域に入る。26台目が悪いのではない。誰かのミスでもない。
たとえ話をしよう。静かな教室で、一人が小声で話しても気にならない。ところが26人が同時に小声で話せば、隣の声が聞き取れなくなる。誰かが大声を出したわけではない。ひとりひとりは小さくても、合計が教室の限界を超えた。それだけのことだ。

だから「どの機材が悪いのか」と探しても、答えは出ない。見るべきは、1つの回路に何台まで載せられるか、という割り算のほうだ。方法はある。ただ、ここで手順を書けば、あなたは半分だけ知った状態で現場に入り、かえって迷う。詳細は有料部にまとめた。
この記事の有料部で手に入るもの
- 漏電ブレーカーが「何を見て」落ちるのかを、数字で理解する仕組み編
- 落ちる原因を「機材・線・つなぎ目・配線・ブレーカー自身」の5か所に分け、現場で見分ける判定表
- 機材1台あたりの漏れ電流から、1回路に載せられる台数を割り出す計算手順(22台の仕分け例つき)
- 踏みやすいミス5つと、見落としやすい珍しいトラブル3つの正解
- 現場入りの前後に埋めるだけの記録シート

有料部を読み終えたとき、あなたの手元には、回路ごとの台数表、5か所の判定表、記録シートの3点が揃っている。次の搬入日から、そのまま使える。


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