TriCasterをサーフェースとLANケーブル直結したら繋がった。
それ、本番で死ぬかもしれない設定だ。
TriCasterを現場に持ち込んで、こんな経験をしたことはないだろうか。

TC1LPコントロールサーフェースをTC1本体に繋いだら、
なぜか認識された。
DHCPサーバーなんて用意していないのに。
あるいは、TriCaster Miniのポートにカメラを直結したら、
IPアドレスが自動で割り当てられて、NDIで映像が見えた。
「さすがTriCaster、簡単だ」と思った。
── その認識が、本番中の致命傷になる。
「繋がった」の正体を、あなたは説明できるか
TriCaster Mini系とTC1 / 2 Elite系は、
ネットワークの設計思想が根本から異なる。

TriCaster Miniは内部にDHCPサーバーを持ち、
接続した機器に自動でIPアドレスを配布する。
しかしそのアドレス体系は `172.16.x.x` という、
一般的な会場ネットワークとは全く異なるレンジだ。
TC1 / 2 Eliteは逆だ。
DHCPを配布する側ではなく、受け取る側の機器だ。
TC1LPコントロールサーフェースは工場出荷時にIPアドレスがゼロの状態で出荷される。
DHCPサーバーなしに直結しても、実は綱渡りの状態で動いているにすぎない。
この違いを知らずに現場に臨んだとき、何が起きるか。
現場で実際に起きている3つの崩壊パターン
パターン1:TriCaster Miniのポートに直接複数台を繋いだ

Mini本体の各NICポートは独立したネットワークセグメントだ。
つまりポート1に繋いだPTZカメラと、
ポート2に繋いだコントロールPCは、
TriCasterが間にいても互いに通信できない。
「カメラは見えるのにコントローラーが効かない」
この現象の原因がここにある。
パターン2:会場ネットワークにTriCaster Miniを繋いだら他の機器がおかしくなった
TriCaster Miniは起動時に約5秒間、外部DHCPサーバーを探す。
しかし会場ルーターよりも先にMiniが起動してしまうと、
内蔵DHCPが先走りして会場のネットワーク全体に
`172.16.x.x` のアドレスを配り始める。
会場の機器が突然インターネットに繋がらなくなった──
その原因がTriCaster Miniだったという事例は、
現場で報告される機材トラブルの中でも特に発見が遅れるケースだ。
パターン3:TC1LPが本番中に突然切断された
TC1LPはDHCPサーバーからIPアドレスを取得して動作する。
「繋がっている」ように見えていても、
その接続がAPIPAという「仮の住所」で成立していた場合、
再起動・台数追加・ネットワーク変化の瞬間に切断される。
本番中にコントロールサーフェースが無反応になる。
フェーダーを動かしても映像が切り替わらない。
この状況での原因特定には、設計されたネットワークなら90秒で済むところが、
設計されていなければ平均45分かかる。
(出典:Cisco Catalyst Best Practices Guide, Chapter 7: DHCP Snooping)
TriCasterは「繋がりやすい機器」だからこそ危ない

TriCaster、特にMini系は、
エンジニアがいない環境でも映像制作ができるように設計されている。
その「親切心」が、ネットワークの問題を見えにくくする。
勝手にDHCPを配布してくれるから、何も考えなくても繋がる。
しかしその「何も考えなくても繋がる」状態は、
条件が1つ変わった瞬間に崩壊する設計でもある。
TriCasterを使うプロが最初に覚えるべきことは、
スイッチャーの操作ではなく、
**「TriCasterがネットワーク上でどう振る舞うか」**だ。
この記事で得られること
有料パートでは以下を完全に公開する。

TriCasterの機種別ネットワーク動作の違い
MiniとTC1 / 2 Eliteでは、DHCPに対する立場が逆になる。
この違いを図解と実測データで整理する。
TC1LPコントロールサーフェースの3つの接続方式と選択基準
直結・ルーター経由・メインネット参加の3方式を、
それぞれの設定手順・コマンド・判定基準とともに解説する。
TriCaster Miniを会場ネットワークに接続する際の起動順序と確認手順
この手順を守るだけで、会場ネットワーク崩壊の99%は防げる。
NDI機器・PTZカメラ混在環境のセグメント設計
台数別のブロードキャスト負荷と、
ネットワークが劣化し始める閾値を数値で示す。
本番前30分で完了するチェックリスト
コマンド・判定基準・対処法をそのまま現場で使える形で提供する。
「繋がった」は成功ではない。
「再現できる」が成功だ。
TriCasterを使うすべての映像プロフェッショナルに、
この記事が届いてほしい。


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