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IP伝送の要。東西のNTT回線を跨ぐ配信設計の基礎とISP選択

2026 3/16
動画の学校 通信
2026-03-16
目次

ライブ配信が夜になると崩れる本当の理由——NTT東西分断とISP構造を知れば、回線選びは変わる


現場で誰も教えてくれなかった「回線品質の正体」


「スピードテストでは上り100Mbpsが出ているのに、本番の配信になると音声が飛ぶ。」

「東京から大阪に向けてSRTで映像を送ったら、昼間は安定していたのに21時を過ぎた途端にビットレートが3分の1に落ちた。」

この経験に心当たりはないだろうか。

ライブ配信やリモートプロダクションに本格的に取り組み始めたプロなら、一度は直面する壁だ。機材を疑い、設定を見直し、それでも原因がわからない。その正体は、日本固有のインターネット物理インフラの構造にある。


「フレッツは悪い回線」は本当か

日本の固定インターネットは、NTT東日本(東京都を含む17都道府県)とNTT西日本(30府県)が、それぞれ完全に独立したNGN(次世代ネットワーク)を運用している。 (出典:NTT東日本・NTT西日本 各社公式サービスエリア情報)

この2つの網は、直接接続されていない。必ずISP(インターネットサービスプロバイダ)のバックボーンを経由して通信する設計だ。

つまりライブ配信で東京から大阪に映像を送る場合、問題の主因は「NTT回線そのもの」ではなく「どのISPを使っているか」に集約される。

現場で長年言われ続けてきた言葉がある。

「フレッツは悪くない。ISPが全てだ。」

この言葉の意味を、構造レベルで理解しているプロがどれだけいるだろうか。


スピードテストが「嘘をつく」理由

Speed TestサービスはISPが自前で用意した国内キャッシュサーバーとの通信速度を測定するケースが大半だ。これは言うなれば「隣の部屋までの速さ」を測定しているに過ぎない。

ライブ配信で実際に必要なのは、YouTubeやCDN配信サーバーまで途切れなく映像を届け続ける持久力だ。このふたつは、まったく別の指標を測定している。

速度ではなく、RTT(往復遅延)・ジッター(揺らぎ)・パケットロス・経路安定性の4指標こそが、配信回線の本当の評価基準だ。


東西を跨ぐ通信で、何が起きているのか

東京と大阪の光ファイバー上の実測RTT(往復遅延)は、適切に設計されたISPを使えば8〜12ms程度に収まる。 (根拠:光の屈折率を考慮した光ファイバー内の伝搬速度は約200,000km/sであり、東京〜大阪間の直線距離約400kmからRTT理論最小値は約4ms。実際のルーティング処理や中継機器の処理時間が加わり、8〜15msが現実的な値となる。参考:IIJ公開ネットワーク品質レポート)

しかし現実の現場では25ms、30msを超えるケースが報告されている。この差はどこから来るのか。

その答えは、ISPのバックボーン設計にある。そして問題はそれだけではない。ISP接続ポイントの地理的配置、IPv6(IPoE)への移行後も残る構造的問題、「ヘアピンルーティング」と呼ばれる通信経路の迷走——これらが複合的に絡み合って、配信現場を悩ませている。


この記事で得られること

この記事では、45年の映像制作現場で積み上げてきたネットワーク診断の実践知識を、体系的に解説する。

具体的には以下の内容を有料部分で公開する:

  • NTT東西の物理インフラ構造と、ISPバックボーンの依存関係を図解で理解する
  • 「地雷ISP」を見抜く4つの構造的チェックポイント
  • traceroute・mtr・iperf・ping の4コマンドによる、配信前の回線診断の完全手順
  • 東京↔大阪間のRTTを判定する具体的な数値基準(理想値・許容値・危険値)
  • 冗長化設計の3段階モデルと、それぞれの構成要素の選び方
  • 記憶に定着させるためのメンタルモデルと要約

機材選定に時間とお金をかける前に、ネットワークの構造を理解することで、配信トラブルの根本原因を取り除くことができる。

本記事はIP伝送に取り組む映像制作のプロ、特にSRT・NDI・ライブ配信・リモートプロダクションに関わる全ての人に向けて書いた。


有料部分へ続く

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