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調光器のノイズが配信を止める(基礎講座)

2026 8/25
動画の学校 通信
2026-08-25
目次

位相制御ディマーとIPネットワークのEMI干渉を防ぐ設計基準

対象読者:撮影・演出・音響・照明・編集・配信・制作進行に関わり、IP伝送技術に関心を持つすべてのプロフェッショナルへ。

スイッチのポートカウンターだけが、静かに数字を積み上げていた

企業イベントの本番中、照明卓が調光フェードのキューを送るたびに、副調整室のマルチビューでカメラ映像がコマ落ちしたようにわずかに揺れた。ネットワークの帯域は余裕があった。Art-Netの通信量も、いつもの現場と変わらない。照明担当は「フェードの操作はいつも通りだ」と言い、配信担当はスイッチャーの設定を疑い、カメラマンはケーブルを疑った。どちらも悪くなかった。本当の原因にたどり着いたのは、本番が終わり、ネットワークスイッチのポートカウンターをたまたま覗いた時だった。CRC(巡回冗長検査)エラーが、フェードのタイミングに合わせて刻むように増え続けていた。

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犯人は帯域ではなく、電気的なノイズだった

照明の調光には、位相制御(サイリスタ/トライアック方式)という仕組みが今も広く使われている。交流の波形を途中で切り落とし、切り落とすタイミングをずらすことで明るさを作る方式だ。この「切り落とす瞬間」に、電圧が急激に立ち上がる。電子部品業界向けメディアpassive-components.euの解説によれば、サイリスタは約1マイクロ秒という短い時間でオンに切り替わり、その瞬間に音声帯域から商用ラジオ帯域まで広がる電磁ノイズの塊を発生させる。しかもこのノイズは、明るさが中間(発光角がおよそ90度)に近いほど強く出て、全灯(0度)か消灯(180度)に近いほど弱くなる(同メディアの解説による)。日本の商用電源は東50Hz・西60Hzの2系統に分かれており、このオン切り替えは1秒間に100回(50Hz地域、交流が1秒間に100回ゼロ点を通過し、その半周期ごとに1回サイリスタが導通するための計算)、あるいは120回(60Hz地域)という規則正しいリズムで発生し続ける。

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このノイズは、電源ケーブルを伝ってネットワークスイッチやPoEカメラの近くまで届く。とりわけ、調光ラックの電源ケーブルとLANケーブルが同じケーブルトレイの中で長く並走していると、ノイズは空間を越えてLANケーブルの信号線に乗り移る。TIA-569規格(米国電気通信工業会の配線ガイドライン)は、シールドなしのデータケーブルと電源ケーブルの離隔距離を、専用の遮蔽材や別ルートを使わない限り最小12インチ(約30cm)確保するよう定めている。この基準を知らずに配線された現場は、決して少なくない。

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あなたの現場は悪くない。壁の薄い部屋が隣り合っただけだ

これは、隣の部屋で誰かが電動工具のスイッチを入れた瞬間、テレビの画面に一瞬砂嵐が走る現象と同じ構造だ。回路そのものはつながっていない。工具と回路は物理的に別々の配線を通っている。それでも、空間を隔てて伝わる電磁波が、薄い壁——ここでは並走するケーブルトレイ——を越えて信号線に届く。照明のディマーとネットワーク機器を同じラックに収めた瞬間、両者は「壁の薄い部屋」の関係になる。ケーブルの取り回しを変えるだけで解決する。ただし、その事実に気づくには、まず「壁が薄い」と疑う視点が要る。

対策の方向性は、すでに存在する

このノイズは、発生原理さえ理解すれば、配線設計の段階で防ぐことができる。ケーブルの取り回し、接地の取り方、フィルタの選定——押さえるべき点は多くない。ただし、CRC エラーの数字だけを見て「ケーブル不良」と判断し、良品のケーブルを何本も交換して時間を失う現場を、私は何度も見てきた。

有料部では、この記事で以下を持ち帰れるように設計してある。

  • CRCエラー・リンク再ネゴシエーション・PTPジッターの数値から、原因を切り分けるステップバイステップの診断手順
  • ケーブル分離・シールド接地・フィルタ選定の具体的な判定基準(数値・出典付き)
  • ラック設計・新規会場の配線計画に転用できるチェックリスト
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この設定を知らないまま本番に入ると、原因の切り分けだけで本番中の貴重な時間を失う。CRCエラーは目に見えず、症状はカメラの映像揺れや配信のコマ落ちという別の顔をして現れるため、電源側を疑うところまでたどり着かない現場が大半だ。次の現場で同じ事故を未然に防ぐ手順が、このあとにある。

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