照明LANのVLAN・ユニバース設計完全ガイド
深夜0時を過ぎた屋外フェスの仕込み現場、32ユニバースのArt-Net照明卓から最終チェックのブラックアウトを送った瞬間、フェーダーが固まった。LANケーブルを差し替え、ノードを再起動し、スイッチの電源まで落として入れ直した。それでも直らない。原因が機材の故障ではないと気づいたのは、翌朝スイッチのポートLEDが全ポート同時に点滅し続けているのを見たときだった。ネットワークそのものが、照明データの洪水で溺れていたのである。

Art-Netは初期設定のままだとUDPブロードキャストで送信される。ArtDMXパケットは18バイトのヘッダーと最大512バイトのDMXデータで構成され、1パケットあたり最大530バイトになる(Art-Net 4 Specification, Artistic Licence Engineering Ltd, ArtDmxパケット定義)。これを仮に40Hzで送出し続けると、1ユニバースあたり530バイト×40回=21,200バイト/秒、ビットに換算して169.6kbpsがブロードキャストとして流れ続ける。32ユニバースを束ねれば5.43Mbps(530×40×32×8)が、同じセグメント上の全ポートに垂れ流しになる。ブロードキャストは宛先を選べないため、送出先に関係のない機器のNICとCPUまで、届いたフレームを毎回処理させられる(IEEE 802.1D、ブリッジのフラッディング規定に基づく)。

これは、モールの館内放送を全店舗のスピーカーから常時流すようなものだ。呼び出したい店だけに届けば済む放送を、無関係な店の店員まで毎回耳を傾けさせられる。照明卓が送っているのは自分のユニバースの指示だけのつもりでも、ネットワークの構造がそれを許していなければ、現場の全員がその音を聞かされ続ける。

方法は存在する。VLANでの分離、ユニバース設計の見直し、そしてArt-Netの送信方式そのものの選び方——この3つを組み合わせれば、同じ規模の仕込みでもスイッチが悲鳴を上げることはなくなる。
この記事の有料部では、次の3点を手に入れられる。
- ブロードキャストストームが発生する仕組みをパケット単位で理解できる図解と計算表
- 現場で即座に適用できるVLAN・ユニバース設計の手順(設定時間の目安付き)
- Wiresharkとスイッチのポートカウンタを使った、その場で効く診断手順

この設定を知らないまま本番を迎えると、照明卓とカメラ制御が同じネットワークに同居している現場では、照明のブラックアウト操作がNDIプレビューのコマ落ちを誘発する。次の現場で同じ事故を防ぐ手順が、このあとにある。


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