放送は「専用機」から「IPソフトウェア」へ変わり始めた
先週、北京の展示会レポートを送ってきた教え子がいた。長文のメールを読み進めるうち、ある1本の動画で手が止まった。ソニーのブースで撮影されたその映像では、カメラ3台とオペレーター1人だけで、ニュース番組並みのマルチカメラ切り替えを成立させていた。以前の現場なら、同じ画づくりに最低でも5人は必要だったはずだ。

これは2026年8月19日から22日まで北京で開催された**BIRTV2026(北京国際放送映画テレビ展覧会)**での出来事である。主催者発表によれば、25か国・地域から508社が参加し、新技術・新製品・新アプリケーションの初公開は1,000件を超えた。来場者は82,000人を超えている。4日間の会期で単純に割ると、1日あたりの来場ペースは20,500人(82,000人 ÷ 4日)という計算になる※1。

数字だけ並べれば「大きな展示会があった」で終わる話だ。だが、SDIとIPのせめぎ合いを40年以上現場で見てきた立場から言わせてもらうと、今回の会場で起きていたのは新製品発表会ではない。放送機材そのものの立ち位置が動いた瞬間だった。
この変化は、電話交換手の仕事を思い出すとつかみやすい。かつて電話をつなぐには、交換台の前に座った人間が、物理的な配線を1本ずつ差し替える必要があった。相手が変わればケーブルをつなぎ直す。これはSDI中心の放送設備の姿にそっくりだ。1本のケーブルが1つの信号に固定されている。一方、今のスマートフォンは1台の端末が同じ回線の上で電話にもなり、地図にもなり、カメラにもなる。回線を固定せず、必要な機能をソフトウェアで呼び出す方式だ。BIRTV2026の会場で示されていたのは、放送設備がこの「交換台」から「スマートフォン」に近づいているという事実である。

方法はある。カメラからGPU・クラウドまでを1本のIPネットワークでつなぎ、そこにAIを組み込む設計は、複数のメーカーがすでに実機で見せる段階に入った。ここから先が、現場を任されている人間にとって一番知りたいところのはずだ。
有料部では、次の3点を具体的な数値と図で整理する。
- BIRTV2026で確認された7つの技術トレンドを、優先度付きでチェックできる一覧表
- 撮影・照明・音響・編集・配信・制作進行・演出、7つの職種ごとに「今日から確認すべきこと」をまとめた対応表
- ソニーの4K IP中継車(12+2+2+1系統構成)を題材にした、自分の現場規模に置き換えるための設計比較表

今の設備のまま次の現場に立つこと自体は、今日も明日も問題なくできる。ただし、この移行に気づかないまま3年が過ぎたとき、若い世代の現場との差は機材の型番の差ではなく、考え方の差になっている。45年、放送とIPの両方を見てきた立場から、その差を埋める地図をこの先に書いた。
※1 出典:BIRTV2026公式発表(会期・来場者数・参加社数)。1日あたり来場者数は筆者による単純計算(82,000人÷4日間)。


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