SDI伝送が抱える距離・帯域・配線の3つの壁を数値で解説
現場で起きたこと

屋外中継の本番30分前、カメラ位置を中継車から73m離れた場所に変更した。12G-SDIケーブルを引き直したところ、モニターに一瞬だけブロックノイズが走り、次の瞬間には映像が完全に同期を失った。ケーブルを1本ずつ点検したが、コネクタにも被覆にも異常は見当たらなかった。
なぜ起きたのか
この現象は故障ではなく、規格上想定された限界に触れただけだ。Belden社が自社ケーブルで公表している実測値によると、3G-SDI(帯域2.97Gbps)の伝送距離は同社1694Aケーブルで155m、6G-SDI(5.94Gbps)は105mとされている(出典:Belden公式ブログ「Think 12G-SDI Over Coax Isn’t Possible? Think Again!」)。一方、より高いクロックレートを扱う12G-SDI(SMPTE ST 2082-1規格、クロックレート11.88Gbps)は、同社の高性能ケーブル4794Rでも93mが上限として示されている。
つまり、帯域が3G-SDIから12G-SDIへと4倍になる間に、同じ系統のケーブルでも伝送距離はおよそ40%まで縮む。73mという距離は、12G-SDIにとってすでに規格上のグレーゾーンに入っていた計算になる。

起きたことの意味
12G-SDIの伝送距離制限は、列車が高速で走るほどカーブを曲がりきれなくなる現象に似ている。低速(3G-SDI)ならレールの多少のゆがみも吸収できるが、高速(12G-SDI)になるほど、わずかな抵抗や曲がりが命取りになる。現場のケーブルが悪かったわけでも、担当者の腕が悪かったわけでもない。信号速度と距離という物理法則が、最初から答えを決めていたのだ。
壁を越える方法は存在する
この壁を越える方法はすでにある。伝送方式を電気信号(SDI)からパケット化されたデータ(IP伝送)に切り替えることで、距離・帯域・配線本数という3つの壁を同時に扱えるようになる。NDIやSMPTE ST 2110といった規格がこれにあたるが、どの規格をどう選び、どう設計するかは現場の条件によって変わる。その選び方を間違えると、今度は「距離は伸びたが遅延で使い物にならない」という別の壁にぶつかる。

この記事の有料部で手に入るもの
- SDIとIP伝送(NDI各方式・ST2110)の伝送距離・帯域・遅延を並べた比較表(数値・出典付き)
- 現場条件から必要な伝送方式を選ぶための5ステップの判断手順
- ネットワーク機材(スイッチ・ケーブル種別・冗長構成)の選定基準
- 小規模ロケから放送センター規模まで、規模別の推奨構成パターン

有料部を読み終えたとき、あなたの手元には「伝送方式の比較表」「現場での選定手順」「規模別の構成パターン」という3点セットが揃う。次にケーブルを延長する現場で、同じ足止めを繰り返す必要はなくなる。


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