目次
SFP光トランシーバー選定とDDM監視で防ぐ原因不明の瞬断

その数値に気づいたのは、本番の2週間前だった。屋外フェスの多カメラ中継で使う光ファイバー幹線を、健康診断のつもりでひと通り点検していたときのことだ。スイッチの管理画面を開き、各ポートの光トランシーバー診断情報をひとつずつ確認していく。ほとんどのポートは横一線の安定したグラフだった。ただ1本だけ、受信光レベルの数値が、3週間かけてじわじわと下がり続けていた。まだ規格の許容範囲には収まっている。アラームも鳴っていない。だが、下がり方には規則性があった。

これは何かの予兆だ、と直感した。だが原因を思いつくまでに、半日以上かかった。
映像や配信の現場では、光ファイバーとSFPモジュール(光トランシーバー)の組み合わせを「型番さえ合えば繋がるもの」として扱いがちだ。実際、それで何年もトラブルなく回っている回線はある。しかし規格の境界線ぎりぎりで運用している回線、中古や貸与のスイッチと寄せ集めのモジュールを組み合わせた回線には、型番が合っていても性能が合っていないケースが潜んでいる。しかもその不整合は、リンクが完全に切れるという分かりやすい形では現れない。数秒おきの瞬断、特定の時間帯だけの不安定さ、原因不明の再送増加といった、犯人の見えにくい形で現れる。

この記事で扱うのは、以下の三つだ。
- なぜ「型番は合っているのに繋がりが悪い」という状態が起こるのか、その技術的な仕組み
- スイッチの中に最初から用意されている診断機能を使い、故障が起きる前に予兆を数値で捉える方法
- 現場で実際に起きた、性質の異なる三つのトラブルとその正解

冒頭で触れた「3週間かけて下がり続けていた受信光レベル」の正体と、それが本番当日に何を引き起こすはずだったのかは、有料部ですべて明かす。結論だけ先に言えば、事故は起きなかった。起きる前に数値が教えてくれたからだ。
── ここから先は有料公開エリアです ──


コメント