DHCP・DNSを使い分け、169.254から始まる”消える”事故を防ぐ

本番30分前、9台のカメラを立ち上げてNDIソースの一覧を確認していた。8台まではすぐに並んだ。最後の1台だけが、いつまで待っても出てこない。ケーブルを挿し直し、カメラを再起動し、スイッチのポートを変えた。それでも現れない。原因が分かったのは本番5分前、ノートPCの画面に「169.254」という見慣れない数字が並んだ瞬間だった。
169.254から始まるアドレスは、機器がDHCPサーバーからIPアドレスを受け取れなかったときに、自分自身で割り振る「リンクローカルアドレス」だ(RFC 3927)。原因はケーブルの不良でもカメラの故障でもなかった。DHCPサーバー役のスイッチが払い出せるアドレスの数(プール)が、その日のうちに尽きていたのである。この現場ではDHCPプールを50個で組んでいたが、当日追加されたモニターとPTZコントローラー、録画機を含めると接続機器は58台に達していた。RFC 3927の規定では、DHCPからの応答が得られない機器はARPプローブを送出し、最短1秒・最長でも約7秒(PROBE_WAIT最大1秒+PROBE_MAX2秒×2回分+ANNOUNCE_WAIT2秒の合計、RFC 3927 §2.2.1・§2.4)で自分のアドレスを確定させてしまう。この7秒の間に、本来割り当てられるはずだったアドレスとの接続機会は失われている。

DHCPサーバーは、ホテルのフロント係のようなものだと考えるとわかりやすい。空いている部屋(IPアドレス)を、来館者に順番に割り当てていく。ところが満室になった瞬間、フロント係は「もう部屋がありません」と言うしかない。行き場を失った来館者は、フロントを通さず勝手に空いていそうな部屋の鍵を作って入ってしまう——それが169.254だ。他の宿泊客の予約台帳には載っていないから、フロントも、隣の部屋の客も、その人がどこにいるのか分からなくなる。

IPアドレスの割り当てには、あらかじめ壊れない設計にする方法がある。DHCPのプール数をどう決めるか、固定IPと自動割り当てをどこで線引きするか、当日の追加機材にどう備えるか——現場でその場しのぎの手打ち設定を続けている限り、この事故は形を変えて何度でも起きる。
この記事の有料部で手に入るのは次の3点だ。
- 接続台数からDHCPプール数とサブネットサイズを逆算する計算式
- 固定IP・DHCP・リンクローカルの3方式を現場でどう線引きするかの判断表
- NMOS対応機器がネットワークをまたいだ途端に見つからなくなる、DNS-SD特有の落とし穴と対処手順

有料部を読み終えたとき、あなたの手元には「機材台数から逆算するアドレス設計シート」「固定・DHCP・予約の3分割ルール」「DNS-SD設計チェックリスト」の3点が揃う。次の現場から、その場しのぎのIP設定とは決別できる。


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