単相3線式「中性線欠相」から映像・照明機材を守る測定と回路分けの手順
計算で組み立てた、テスターが160Vを示す現場
先に断っておく。これから書く場面は、実在の事故の再現ではない。回路の理屈から、そうなると計算で出る数字である。

仮設の分電盤に、100Vのブレーカーが左右二列に並んでいる。左の列にはハロゲン照明が合計1,000W、右の列には250W。そこへ、分電盤の奥で中性線の接続が一本、外れる。ブレーカーは1つも落ちない。照明は点いたままだ。ところが右の列のコンセントにテスターを当てると、表示は160Vになる。左の列は40V。
計算はこうだ。抵抗は左が10Ω、右が40Ω(100×100÷ワット数)。この二つが200Vを直列で分け合うので、右の電圧は200×40÷(10+40)=160V。100Vと書かれた250Wの球は、250×(160÷100)²=640Wを受け取る。定格の2.56倍だ。流れる電流は200÷50=4.0A。15A定格の回路なら26.7%にとどまり、ブレーカーが動く理由はどこにもない。
100Vは、測るまで保証されていない数字だ
日本では電気事業法施行規則第38条により、標準電圧100Vの供給は101Vの上下6V、つまり95〜107Vに収めることになっている(出典:電力広域的運営推進機関「電気の質」2024年度版)。単相3線式で中性線が切れると、100Vのコンセントの電圧は負荷の比率で決まり、最大は200V。法の上限107Vの1.87倍(200÷107)に届く。

備えとして、主幹には中性線欠相保護付きの漏電ブレーカーを置く考え方がある。三菱電機の仕様表では動作過電圧135V・1秒以内、不動作過電圧120V。パナソニックの解説では130V±5V・0.5秒以内だ。法の上限107Vから保護が約束される135Vまで、28Vの帯が空いている。この帯の中では、保護が働かないまま機材に電圧がかかり続ける。
あなたの腕の問題ではない
たとえるなら、2人乗りのシーソーだ。支点が中性線で、座っているのが左右の負荷である。支点が外れた瞬間、軽い子は空へ跳ね上がり、重い子は地面に沈む。電圧でも同じことが起きる。
照明も映像も、図面どおりに組んだ。それでも壊れたなら、自分の腕を疑いたくなる。その気持ちはわかる。だが見ていなかったのは機材の仕様ではなく、電気が分電盤から機材までどう分かれて届くか、という配線の構造のほうだ。

方法は、ある
必要な道具は、テスター1本と、機材のワット数を書いた一覧表だけだ。会場への聞き取り、機材の振り分け、測定、異常が出たときの動き方。どれにも決まった順序がある。
この記事で手に入るもの
- 下見で会場の電源方式を聞き出す、6項目の質問票
- 機材を電気の性質で分ける台帳の様式
- 通電後に使う測定記録表と、合否を決める数値の基準
- 左右への振り分けを判定する3段階の線引きと、その計算根拠
- 異常に気づいたときの停止手順と、連絡する順番
- 計算で確かめた4つの実例と、症状の早見表

有料部を読み終えたとき、質問票、機材台帳、測定記録表の3点が手元に揃う。次の現場の下見から、そのまま使える。


コメント