2026年10月25日時点の情報で書いている。法律の解釈と各社の規約は動く。使う日に、最新の公式案内を必ず確認してほしい。
Chapter 0-1|納品から3週間後に届く、一通のメール
仮の話をしよう。

あなたはウェブCMの映像を納めた。BGMはAIに作らせた。生成サービスは有料プランで、規約には「商用利用可」と書いてある。確認はした。納品は済み、請求も通った。
3週間後、クライアントからメールが届く。
このBGM、別の動画にも流用したい。作曲者は御社で間違いないか。権利の根拠になる書類を出してほしい。
さて、何を出す。
規約のスクリーンショットか。それでは答えにならない。そこに書いてあるのは、サービス運営会社があなたに「使ってよい」と許した、という契約の話だ。この曲を誰が創ったのか。著作権は誰のものか。メールの問いには、まだ一行も答えていない。
答えに詰まるのは、あなたの腕が足りないからではない。AI音楽の権利は、契約、法律、配信の窓口、管理団体の4か所で、別々の基準が動いている。その4か所を1枚の地図にしたのが、この記事だ。
Chapter 0-2|プロンプトだけで作った曲を、JASRACは管理しない

2026年6月、JASRACがAIを使った作品の取り扱い指針を公表した。単純な指示に基づいてAIが歌詞も楽曲も自律的に生成した作品は、人間の創作的寄与が認められず、著作物に当たらないため管理しない、と明記している。
数字にすると、こうなる。作品を構成する要素は、歌詞と楽曲の2つ。人間が創作した要素が0なら、管理の対象になる要素の割合は 0÷2=0%だ。(出典:共同通信、2026年6月12日配信)
足元も揺れている。2024年6月、大手レコード会社3社(ユニバーサル、ソニー、ワーナー)が、AI音楽サービスのSunoとUdio(ともに米国企業)を相手に、米国で著作権侵害の訴訟を起こした。3社×2社=6組の対立のうち、2026年9月末の時点で和解が確認できるのは3組。3÷6=50%だ。残る3組は係争が続いている。(出典:訴訟追跡サイト2件。算出の内訳は有料部 Chapter 5)
「使えるのか、使えないのか」を知りたい読者には、歯切れの悪い話に聞こえるだろう。だが、ここが出発点だ。
Chapter 0-3|許可証と所有権は別物だ

Sunoなどの有料プランが与えているのは、商用で使ってよいという許可だ。これを「自分の著作物になった」と読み替えた時点で、話がずれ始める。
道路使用許可を考えてみてほしい。許可を取れば、決められた場所で屋台を出せる。しかし、道路があなたの土地になったわけではない。隣に別の屋台が並んでも、「ここは私の場所だ」とは言えない。
AI音楽の商用利用の許可は、これに近い。使うことは認められる。だが、その曲を他人が使うのを、著作権を根拠に止められるかどうかは、人間がどこまで創作に関わったかで決まる。許可は契約が与える。守りは、人間の創作に対して法律が与える。この2つを混ぜたまま納品すると、冒頭のメールに答えられなくなる。
Chapter 0-4|線引きは存在する。ただし、窓口ごとに引き方が違う
朗報がある。線は、引ける。
人間の手が入った部分は、守られる。その事実を記録しておけば、配信の審査、管理団体への届出、クライアントへの説明のどれにも使える。ただし、窓口によって受け付ける範囲が違う。同じ曲が、ある窓口では通り、別の窓口では弾かれる。
では、どこまで人間の手を入れればよいのか。どの窓口に、何を、どう書いて出すのか。ここから先は、有料部分に書いた。
Chapter 0-5|この記事で手に入るもの
- 契約上の許可と、法律上の著作権を分けて判断する基準(文化庁が挙げる判断材料4つの読み方)
- 生成の前・中・後で、人間の創作を記録する「人間寄与メモ」の書式
- 配信代行・管理団体・ストック音源の窓口5つについて、可否を並べた一覧
- JASRACへの作品届の書き方と、納品契約に入れる5項目
- よくあるミス2つと、珍しいがダメージの大きいトラブル1つ。それぞれの正解
- 明日から回せる5つの運用ルール

45年、映像の現場に立ってきた。権利の確認は地味で、後回しにされやすい。だが、後回しにした分は、納品のあとに別の形で払うことになる。この先に、その払いを先に済ませる手順を置いた。


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