窓辺のレースが、壁の質感まで連れていく
窓辺のセットにレースのカーテンを吊ったとする。空調の吹き出しが当たり、裾が2秒で1往復する。スタジオのモニターで見れば、朝の柔らかい空気そのものだ。ところが配信先の画面を等倍で見ると、カーテンの周りに四角いモザイクが浮き、隣の壁の織り目まで一段ざらついている。

美術は間違っていない。エンコーダが不調なわけでもない。映像の送り道には1秒に運べる量の上限があり、揺れる布は、その量を誰にも断らずに使っている。
数字で見ると、布1枚の重さがわかる
YouTubeのライブ配信設定ヘルプには、1080p・60fps・H.264の推奨が17 Mbps、最低が6 Mbpsと書かれている。17 Mbps ÷ 60コマ = 約283,000ビット。1コマに使えるのは平均で約35.4キロバイトだ。最低の6 Mbpsは推奨の35.3%にあたる。
私が条件をそろえて圧縮した試験では、画面の25%だけを揺らしたとき、同じ画質を保つために必要なデータ量が24.3%増えた(試験条件は有料部に記す)。画面の約4分の1を占める布が、通信量を約4分の1ふくらませたことになる。
悪いのは、美術でもエンコーダでもない
動画の圧縮は、前のコマとの「間違い探し」の答案だけを送る仕事だ。変わった場所が画面の1%なら答案は短い。揺れる布が25%を占めれば、答案用紙の4分の1を毎コマ書き直すことになる。しかも使える紙の枚数は決まっている。書き直しが膨らんだ分だけ、ほかの場所の字が細くなる。

荒れた原因は誰かの腕ではない。持ち分の配分が、搬入前に決まっていなかっただけだ。そこを責めても画質は戻らない。
揺らしていい面積は、搬入前に数字で決められる

カーテンも造花もモールも、外せと言う必要はない。画面の何%まで揺らしてよいかを、回線の上限から逆算して決める方法がある。美術チームには「外してくれ」ではなく、「この面積までなら大丈夫だ」と伝えられるようになる。
この記事で手に入るもの
- 画面の中で揺れている面積を、10分で%にする測り方
- 風・機構・光・接触、4つの動力のどれが原因かを切り分ける早見表
- 自分の機材で同じ試験をやり直すための、コピーして使えるコマンド
- 配信回線の上限から、揺らせる面積の上限を逆算する計算式と、計算済みの現場例
- 揺れが見つかったときの打ち手を選ぶ基準と、美術チームへの伝え方
- 日本の現場で守る防炎ラベルの決まり

ここから先は、次の現場で使う手順だ
この配分を決めないまま本番を迎えると、揺れる面積が1%増えるたびに、必要な通信量がおよそ0.95〜0.97%ずつ増える(私の試験、揺れる面積10〜50%の範囲)。回線に余裕のない現場では、増えた分がそのまま壁や肌の荒れになる。
45年の現場で積み上げた判断軸を、あなたには30分で受け取ってほしい。


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