1設定は合っている。それでも、映像は来ない
遠隔地のカメラ映像を、事務所で受けたい。送り側のエンコーダーは設定済み。受け側のルーターにも、UDPポートの開放を入れた。画面には「待機中」の文字が出たまま、1分が過ぎ、10分が過ぎる。

ケーブルを疑い、ポート番号を3回打ち直し、最後にファームウェアを疑う。だが、原因はそのどれでもなかった。受け側の回線契約が、外からの着信を最初から受け付けない方式だったのである。
着信できるかどうかは、設定ではなく契約で決まる
外からの着信を受けられるかどうかは、「NATを誰が持っているか」と「使えるポート番号に制限があるか」の2点で分かれる。

国内の光回線で使われるIPv4 over IPv6の2方式を並べると、差がはっきり見える。DS-Liteは、IPv4のNAT処理をISP側の設備で行うので、利用者側でポート開放を設定するのが難しい。MAP-Eは契約者側のルーターにNAT機能があり、ポート開放はできる。ただし複数の契約者が同じIPアドレスを共有するため、使えるポート番号が限られる(以上、NTT東日本法人向けコラム)。
MAP-E(v6プラスなど)で割り当てられるポートは約240個とされる(natchecker.com の解説)。ポート番号は16ビットなので全体で65,536個。240 ÷ 65,536 = 0.37%。全体の1%にも届かない枠の中で、映像の受け口を探すことになる。
もう1つ、通信事業者がNAT専用に確保したアドレス帯がある。100.64.0.0/10、2の22乗で4,194,304個(RFC 6598)。契約者の手元からは見えない場所で、アドレスを共有する仕組みだ。
あなたの腕の問題ではない
DS-Liteの環境に、ポート開放の設定を何時間入れても、結果は変わらない。設定が悪いのではなく、設定を受け付ける場所が自分の手元にないからだ。

たとえるなら、マンションのインターホンだ。住人は外へ電話をかけられる。通話が始まれば、相手の声も届く。ところが外の人は、部屋番号を指定して直接呼び出すことができない。ポート開放とは、管理室に「この番号の呼び出しは、あの部屋につないでくれ」と頼む作業にあたる。管理室がその頼みを受け付けない契約なら、頼み方をどれだけ磨いても通らない。
逆に言えば、住人から外へかける電話は、いつでも通る。この性質が、解決の糸口になる。
方法はある。順番がある
SRTには、ポートを開けない側でも成立する接続のかたちがある。ただし、どの回線にどのかたちを当てるかは、回線の見分けが先だ。見分けを飛ばして設定を触ると、遠回りになる。
この記事で手に入るもの
- ルーターの画面と外部の確認だけでできる、方式の判定手順(暫定判定まで3分、確定まで6分)と判定表
- 4つの壁(建物内の二重ルーター、ISP側のNAT、ポート制限つきの共有、ポート開放可能な環境)ごとの対処の分かれ道
- SRTのCaller、Listener、Rendezvousの割り当て早見表
- 中継サーバーを挟む場合の、レイテンシー設定の計算式と計算例
- 現場に貼れるチェックカード(10項目、所要時間つき)

この判定を知らずに、次の現場へ行く前に
この記事の判定手順は、ルーターの画面確認2分と、外から見えるアドレスとの照合1分で、暫定の答えが出る。それを知らないまま、ポート番号の打ち直しを続けると、同じ作業を何度繰り返しても結果は変わらない。45年の現場で積み上げてきた判断の順番を、このあと全部書く。


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