ルーティングが映像クオリティを支配する——なぜ100Mbps回線でも配信が落ちるのか
対象:IP伝送に関わる映像制作プロフェッショナル向け
著:videolife / onoring
「回線は速い。なのに、映像が止まる。」

スピードテストを走らせると、上り100Mbpsが余裕で出ている。エンコーダーのステータスも緑。会場のWi-Fiも問題なし。なのに本番が始まった瞬間、配信の映像がカクついて止まる——。
この症状、心当たりはないだろうか。
実は、「回線が速い=配信が安定する」は成立しない。問題の核心は**データが”どこを通るか”**にある。どんなに太い道路でも、間違った出口を通れば渋滞に巻き込まれる。ネットワークも同じ構造だ。
映像プロが見落とす「見えない経路」の罠

8Mbpsで3系統の映像を配信するとする。合計24Mbpsだ。100Mbps回線があれば計算上は余裕に見える。
しかし現場では、この「余裕のある100Mbps回線」から実際に使えるスループットが大幅に落ちることがある。原因はエンコーダーでも回線でもない。データが”遠回りの経路”を通っているからだ。

VPNが有効になったまま配信した場合、OpenVPNを経由すると暗号化処理の負荷と経路延長により、実効スループットが元の50〜80%程度に低下する(OpenVPNコミュニティ実測データ)。100Mbps回線でも実際に使える帯域が50〜80Mbpsになる計算だ。これに映像以外のトラフィックが加われば、24Mbpsの配信がギリギリか、届かなくなる。
さらに致命的なのはパケットロスだ。経路上のロスが1%を超えると、TCPの再送制御が頻発し、映像ストリームは数秒ごとに停止と再開を繰り返す。スピードテストには映らない現象だ。
「ルーティング」という名の交通整理

この問題の根本にあるのが**ルーティング(経路制御)**だ。
ルーティングとは、ひとことで言えば「データをどこへ送るかを決める交通整理」である。信号機が車の流れを制御するように、ルーティングはデータパケットの流れを制御する。そしてこの設定が間違っていると、いくら高性能なカメラを使っても、いくら高速なエンコーダーを用意しても、配信の品質は落ちる。
プロの映像現場では、カメラ・スイッチャー・エンコーダーの設定には徹底的にこだわる。しかし、その先の「データが通る道」の設計を見落としているケースが実に多い。ルーティングは「映像システムの裏の主役」と言っていい。
この記事で、何が手に入るか
有料部分では、以下の内容を完全公開する。
映像プロが現場で即使える「ルーティング診断の4ステップ」、配信トラフィックだけを専用回線に流す「分離ルーティング設計の具体手順」、Windows/macOSで使える診断コマンドの実行例と出力の読み解き方、VLAN環境でのルーティング設計パターン(制作系/配信系/管理系の3分離モデル)、帯域計算シートの読み方と経路設計への反映方法、そしてイベント配信現場における「配信が落ちない」ネットワーク構成の実装例だ。

45年の現場経験から言える。ルーティングを理解した日から、配信トラブルの原因が「見える」ようになる。見えれば、直せる。


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