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波形は正常なのに、なぜ一定周期で音が消えるのか

2026 10/05
動画の学校 音響
2026-10-05
目次

AES67とST2110-30、ptime(パケット時間)不一致という盲点

中継車の中で、ミキサーのメーターは正しく振れていた。ネットワークスイッチのポートランプにもエラー表示はない。それなのに、送出されている音声だけが、ほぼ同じ間隔で「プツ、プツ」と欠ける。ケーブルを挿し直し、スイッチを再起動し、最後にはミキサー本体を疑って予備機に差し替えた。症状は消えなかった。あとになって分かったことだが、疑うべき場所はケーブルでもミキサーでもなく、音声をIPパケットに切り分ける際の「刻み方」そのものにあった。

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AES67やSMPTE ST2110-30は、音声をひとかたまりのデータとして送るのではなく、一定時間ごとに細かく分割したパケットとして送り出す。この分割の単位時間を「ptime(パケット時間)」と呼ぶ。サンプリング周波数48kHzの場合、ptimeが125マイクロ秒ならパケット1個あたり6サンプル、250マイクロ秒なら12サンプル、333マイクロ秒なら16サンプル、1ミリ秒なら48サンプル、4ミリ秒なら192サンプルを運ぶ(AIMS Alliance「AES67-101: The Basics of AES67」2018年版のRTPパケット時間規定表による)。そしてAES67の規格が受信側に必須として課しているのは、この中の「1ミリ秒・1〜8チャンネル・48kHz・24bit」というただ1系統だけだ(同資料)。ST2110-30側も、Level A(1ミリ秒・1〜8ch)、Level B(0.125ミリ秒・1〜8ch)、Level C(0.125ミリ秒・1〜64ch)という3段階に分かれている(同資料)。つまり「AES67対応」「ST2110-30対応」という表記だけでは、実際にどの刻みでパケットが飛んでくるかは決まらない。

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これは、高速道路の料金所に似ている。ETCレーンが「1台ずつ、1秒間隔」で通過する前提で設計されているのに、実際には「8台まとめて、8秒に1回」という固まりでやってくる車列があったとする。通過する車の総数は変わらない。だが、ゲートの処理リズムは前提と食い違ったまま動き続け、いつか必ず破綻する。ptimeの不一致もこれと同じだ。運ばれている音の情報量そのものは正しいのに、届くリズムの単位が想定と違うため、受信側の処理系だけが噛み合わなくなる。だからオペレーターは「音はちゃんと届いているはずなのに」と混乱する。それは操作の未熟さではない。単位が噛み合っていないという、設計段階の話だ。

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この食い違いを見つける方法は存在する。SDP(Session Description Protocol)という、送受信の間で交わされる設定情報の中に、”a=ptime”というたった1行がある。この値を送信側と受信側で照合し、一致させる手順を踏めば、周期的な音切れの大半は解消できる。ただし、周期的な音切れを生む要因はptime不一致だけではない。少なくとも他に2系統あり、それぞれ現れ方の周期が違う。この3系統を切り分けて診断する手順を、このあとに書く。

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有料部を読み終えると、次が手元に揃う。

  • 送信側と受信側、双方のSDPから”a=ptime”の値を実際に読み取り、照合する手順
  • 「周期的な音切れ」という症状を、ptime不一致・クロックドメイン競合・QoSタグ消失の3系統に切り分ける診断の考え方
  • 受信側の対応レベル(Level A/B/C)を確認し、大規模チャンネル数のシステムでも安定して繋ぐための設計手順
  • 現場でよくある誤診断と、それぞれの正解
  • PTPの再同期に連動する、ptime不一致とは別種の周期的グリッチの見分け方

この食い違いに気づかないまま本番を迎えると、ケーブル交換、スイッチ再起動、機材の総取り替えという順番で時間を溶かすだけの事例が実際に起きる。原因はそのどれでもない。次の現場で同じ迷走をしないための診断手順が、このあとにある。

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