2014年1月2日、滋賀県。コードリールからコードを全部引き出さないまま電気製品をつなぎ、使い続けた。つないだ製品の消費電力は、そのリールの定格を超えていた。死亡1人、重軽傷3人。
13か月後の2015年2月11日、静岡県。コードが巻き取られた状態のまま、巻いた状態で使える電気の量を超える製品がつながれた。過電流でコードが発熱し、ショートして発火したと推定されている。建物は全焼した。
どちらも、製品評価技術基盤機構(NITE)が2015年3月26日に公表した注意喚起に載っている事例だ。

「巻いたまま使うな」。この一言は、映像の現場にいれば誰でも知っている。それでも事故は起きる。理由は単純で、この一言が発熱の原因のうち一つ分しか言い当てていないからだ。
同じ資料に、集計がある。平成21年度から25年度までの5年間にNITEへ通知された、電源コード・配線器具の事故は48件。このうち20件が火災に至った。20÷48=41.7%。死亡は2件だ。
原因で分けると、改造・修理や不適切な接続が36件(75%)。配線器具の定格を超えて使い、コードが異常に発熱したものが12件(25%)。コードリールの件数は別掲されておらず、断定はできない。ただ、コードリールは配線器具に分類されるから、巻いたまま使う事故は後者の25%の側にいると読める。

もう一つ、数字を置いておく。コードの発熱は、電流の2乗に比例する(ジュールの法則 P=I²R)。同じコードで電流が10Aから15Aへ1.5倍になると、熱は1.5×1.5=2.25倍だ。日本の100V電源なら、1000Wの機材が1500Wになっただけで、コードの熱は2倍を超える。
冬用のダウンジャケットを着て、マラソンを走る場面を思い浮かべてほしい。体が出す熱の量は、ジャケットを脱いで走った時と変わらない。違うのは、熱の逃げ場だけだ。ドラムに巻かれたコードも同じことが起きている。出す熱は同じでも、重なった層の内側では逃げ場が消える。熱は溜まり、溜まった熱が抵抗を押し上げ、さらに熱を生む。

だから、あなたが不注意だったわけではない。「巻くか、引き出すか」の二択で教わってきたせいで、熱を作る側と逃がす側の仕組みが、別々に見えていなかっただけだ。
方法はある。発熱の原因は4つに分けられ、1本のリールにつき約5分で点検が終わる。何を、どの順番で、どの数値を基準に見るのか。ここには書かない。
有料部で渡すのは、次の5点だ。
- 4つの原因の見分け方と、現場で測る数値の基準
- 機材の消費電力を、アンペアに直して判定する3ステップの計算
- 温度センサーが電源を落としたときの復帰手順と、再び落ちない条件
- よくあるミス3つと、見落とされやすいトラブル3つの正体
- 持ち出し前に使える、リール1本ごとの点検表

NITEの集計では、48件のうち20件、41.7%が火災になっている。次の現場で、その数字の側に立たないための手順が、このあとにある。


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